Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 甲状腺(JABTS)
症例

(S608)

造影超音波を併用した針生検が診断に有用であった甲状腺癌の一例

Core-Needle Biopsy with contrast enhanced ultrasound was useful for diagnosis of Thyroid cancer

中野 賢英, 福成 信博, 西川 徹, 相田 貞継

Masahide NAKANO, Nobuhiro FUKUNARI, Toru NISHIKAWA, Sadatsugu AIDA

昭和大学横浜市北部病院外科

Surgery, Showa University Northern Yokohama Hospital

キーワード :

【目的】
超音波造影剤は,血管内に投与された微小気泡と組織間で音響パルスの散乱が異なることを画像化することでその造影効果を得ており,主に肝臓などの腫瘍性疾患の診断に用いられている.甲状腺結節性病変の診断には,超音波B-modeと穿刺吸引細胞診にて極めて高い正診率が得られているが,甲状腺未分化癌,低分化癌など内部の壊死を伴う結節性病変では,腫瘍内部の適切な穿刺部の決定に難渋することがある.今回,壊死成分が多くを占め,超音波ガイド下での穿刺吸引細胞診,針生検では適正な検体を得ることが困難であった病変に対して,超音波造影剤を用いて穿刺部位を決定し,良好な検体を得ることができた症例を経験したため,画像を供覧しその有用性について報告する.
【対象】
症例は74歳女性.甲状腺左葉から左内頚動脈,左鎖骨下動脈まで達する巨大な甲状腺腫瘍に対して,前医で2回穿刺吸引細胞診を施行するも診断がつかなかったため,精査加療目的に当科を紹介受診された.
【方法】
画像からは周囲組織への浸潤がみられ,早期の診断,治療を要する状況であり,入院の上,針生検を施行した.CTで腫瘍中心部の造影効果が乏しく中心部壊死していることが予想されたため,超音波下に腫瘍辺縁の充実部分に対して穿刺をおこなった.カラードプラを用いて血流がある部位より検体を採取したが,壊死組織が多く癌腫ではあるがその組織型に関しては診断困難との結果であった.確実に検体を採取するために摘出生検も検討したが,大動脈弁置換術後であり抗凝固剤も内服していたためリスクが大きいと判断し,針生検を再検することとした.
【結果】
超音波造影剤を用いて腫瘍内に十分な血流がみられる部位を確認し針生検を行い,病理学的検索にとって充分な適正な組織を得ることができた.形態からは低分化癌の像であり,免疫染色の結果p63,p40が陽性であったため,扁平上皮癌の診断となった.
【結論】
甲状腺未分化癌,扁平上皮癌などは,急速増大するに従い内部血流が低下し中心部が壊死に陥ることが多いため,腫瘍の辺縁から検体を採取する必要があることは知られている.明らかな壊死部位は,B-modeでhypoechoicに描出され,カラードプラで血流がみられないことなどで判断するが,カラードプラでは微細で低流速の血流まで描出することができないこともあり,確実に検体を得られる部位を同定することは難しい.超音波造影剤は微小気泡の平均径が2-5μmと非常に小さく,血流のある組織の末梢まで十分到達可能であるため,血管の描出のみならず組織Perfusionの血流評価をより正確に行うことができる.今回の症例においては,腫瘍内で血流が維持されている部位を正確に描出しピンポイントで穿刺ができたため,正確で安全な処置を行えた.また,手術を回避し患者負担を減らすことが可能となった.超音波造影剤は適応症が限られていることもあり一般的に用いることは困難であるが,他に代替検査法がない場合には,患者負担を減らし診断能を高めることができるため,甲状腺結節性病変の診断,検査においてもその使用を検討する価値があると考えられる.