Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例2

(S603)

両側ともアポクリン癌であった同時性両側性乳癌の1例

A case of Synchronous Bilateral Breast Cancer Showing Bilateral Apocrine Carcinomas

西村 はるみ, 王子 史恵

Harumi NISHIMURA, Fumie OJI

1JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院診療放射線科, 2金沢大学大学院医薬保健学総合研究科

1Azumi Hospital, Department of Radiology, 2School of Health Sciences, College of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University

キーワード :

【はじめに】
アポクリン癌の頻度は少なく,かつ同時性両側性乳癌も発生率も低い.今回,両側ともアポクリン癌であった同時性両側性乳癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
60歳代女性
【現病歴】
検診のマンモグラフィ(以下MMG)で指摘され,当院受診.
【診察時身体学的所見】
左乳房に約1cm大の硬結を触知した.
【当院MMG所見】
左乳腺に構築の乱れを認めた.その他,両側に良性石灰化を認めるのみであった.
【超音波検査(以下US)所見】
左Cに境界明瞭粗ぞうな低エコー腫瘤を認めた.内部は比較的均質,後方エコー不変~やや減弱であった.微細高エコーを認めた.さらに対側の右CAにも内部性状が類似した腫瘤が集塊していた.乳腺境界線の断裂あり.USでは両側乳癌を疑う所見であった.
【MRI所見】
両側とも乳癌と診断された.
以上より,両側乳癌と診断し,手術を施行した.
【病理組織学的所見】
両側ともアポクリン癌であった.
【考察】
アポクリン癌の頻度は少なく,かつ同時性両側性乳癌も発生率も低い.またアポクリン癌は,細胞像で定義される組織型であり,さまざまな組織構築を呈しうるため,アポクリン癌に特徴的な画像所見はない.今回の症例はMMGで左乳腺に構築の乱れを認めた.その他,両側に良性石灰化を認めるのみであった.しかしUSでは両側に明らかな腫瘤を認めており,ともに乳癌を疑う所見であった.MMGでは放射線透過性の差が少ないため乳腺組織と病変が重なった場合に診断精度が落ちるのに対し,USでは乳腺組織と乳癌の音響特性が通常異なっているため病変の描出が容易である.今回は,そのようなUSの特徴が活かされた症例であり,かつ頻度からすると極めて稀な症例であった.
【結語】
両側ともアポクリン癌であった同時性両側性乳癌の1例を経験した.