櫻井 健一, 藤崎 滋, 原 由起子, 窪田 仁美, 鈴木 周平, 安達 慶太, 増尾 有紀, 榎本 克久, 富田 凉一, 平野 智寛

Kenichi SAKURAI, Shigeru FUJISAKI, Yukiko HARA, Hitomi KUBOTA, Shuhei SUZUKI, Keita ADACHI, Yuki MASUO, Katsuhisa ENOMOTO, Ryouichi TOMITA, Tomohiro HIRANO

¹日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科学分野, ²医療法人社団藤崎病院外科

¹Divison of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, NIhon University School of Medicine, ²Department of Surgery, Fujisaki Hospital

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4年間に異時性に3カ所に発生した乳房異時性多発癌を経験したので報告する．
症例は58歳，女性．乳癌検診で異常を指摘され，当科を受診した．マンモグラフィでは構築の乱れを認めた．造影MRI検査では右AC領域に7mmの造影部位を認めた．吸引式針生検の結果，乳癌と診断された．ステレオガイド下マンモトームを施行したところ乳癌と診断された．術中超音波検査を施行したところ，マンモトームで組織を採取した後と思われる構築の乱れた部位とマンモトームマーカーの位置は3cm程はなれていた．Bp+SLNBを施行．最初に構築の乱れた部位を中心に2cmのマージンをとって切除した．術中迅速診断で病変が含まれており，切除断端は陰性との診断であった．次にマーカーに対して追加切除をおこなって，マーカーを回収した．最終病理診断でも切除断端は陰性であり，追加切除した部位にはマーカーは存在したが，癌が存在しなかった．微小病変に吸引式針生検を行った場合，術中超音波検査で瘢痕部を検索することは有用であると考えられた．T2N0M0=StageIIA，ER陽性，PgR陽性，HER-2陰性，Ki-67:10％と診断された．放射線療法とLetrozolの投与を受けて経過観察されていた．1年6ヶ月後の超音波検査で左乳房E領域に20mmの病変を認め，針生検で乳癌と診断された．全身検索を行い，遠隔転移がないことを確認した後にBt+SLNBを施行．T1N0M0=StageI，ER陰性，PgR陰性，HER-2陽性，Ki-67:70％と診断された．術後はTrastzumabとTamoxifenの投与を受けていた．術後2年6ヶ月の検査で転移・再発の徴候がないことから右残存乳腺切除+両側エキスパンダー挿入術を施行した．右残存乳腺の病理組織診断で前回創部と離れた部位にDCIS，ER陰性，PgR陰性，HER-2陰性が発見された．2次2期再建を施行するにあたり，残存乳房の超音波検査で発見することができなかった3個目の乳癌が発見された症例であり，乳房温存手術の適応・時期について考えさせられた．