安達 慶太, 鈴木 周平, 原 由起子, 長島 沙樹, 増尾 有紀, 窪田 仁美, 和賀 瑛子, 平野 智寛, 榎本 克久, 櫻井 健一

Keita ADACHI, Shuhei SUZUKI, Yukiko HARA, Saki NAGASHIMA, Yuki MASUO, Hitomi KUBOTA, Eiko WAGA, Tomohiro HIRANO, Katsuhisa ENOMOTO, Kenichi SAKURAI

日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科学分野

Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
超音波診断において，充実性腫瘤は形状，境界部，内部エコー，後方エコー，その他随伴所見などを用いて評価される．今回，乳房超音波検査にて一側乳房に多彩な腫瘤像を複数個認めた乳癌の1例を経験したので報告する．
【症例】
45歳女性，左乳房腫瘤を主訴に当科を受診した．視触診で左A領域に2cm大，左AB領域に2cm大，左乳房C領域に1cm大の腫瘤を触知した．マンモグラフィ検査では明らかな所見は認めなかった．乳房超音波検査で①左A領域に21×18×11mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤，②左B領域に21×20×12mmの境界明瞭平滑な楕円形低エコー腫瘤，③左C領域に21×13×12mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤，④左C領域に12×9×10mmの境界明瞭粗造な嚢胞内腫瘤を認めた．各腫瘤に対し針生検を施行し，①乳頭腺管癌（ER+，PgR+，HER2:2+（FISH-），Ki-67:5-10％），②Fibroepithelial lesion，③乳頭腺管癌（ER+，PgR+，HER2:2+（FISH-），Ki-67:5％）の診断であった．乳房造影MRI検査では左A領域に12mm，左B領域に21mm，左C領域に26mmの造影結節として描出された．全身検索にて明らかな転移所見は認めず，左乳房に対し胸筋温存乳房切除術を施行した．病理組織学的検索にて左乳房全体に広範囲に広がる複数の浸潤巣を認め，浸潤性乳管癌と小葉癌の混在を認めた．最大の浸潤巣は8cm大であり，各病巣はすべて乳管内病変で連続していた．また，左B領域に線維腺腫の併発を認めていた．
【考察】
本症例では，超音波検査にて複数の充実性腫瘤を認め，異なる組織型の乳癌の混在が予想されたが，手術検体では各腫瘤は同一の組織型として診断された．浸潤性乳管癌と小葉癌が混在していたことから，超音波にて多彩な腫瘤像を呈しえたことが考えられた．