Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例2

(S601)

乳がん超音波検診により偶然発見された肉芽腫性乳腺炎の1例

A Case of Granulomatous Mastitis incidentally diagnosed by Breast Cancer Ultrasonography

中谷 守一

Shuichi NAKATANI

南大阪病院乳腺外科

Breast Surgery, Minami Osaka General Hospital

キーワード :

乳がん超音波検診で要精査とされ肉芽腫性乳腺炎(以下GM)の最終診断に至った1例を経験したので報告する.
【症例】
44歳女性.現病歴:うつ病治療中.経産婦.X年8月乳房超音波検査(以下US)で右乳房腫瘤像を指摘され精査目的で同月初診.乳房視触診所見:異常所見を認めず.US:右乳輪部10:00に2.6×3.2cm,また12:00に2.1×2.7cm径の楕円形・境界明瞭な低エコー腫瘤像を認めた.内部不均質・点状高エコー(fig. 1)と辺縁に血流を認めた.マンモグラフィ(以下MG):不均一高濃度で局所的非対称性陰影を認め(3,1)とした.乳房MRI(磁気共鳴画像検査):右乳房外側部に2個の腫瘤像を認めた.頭側像は不整形・23×20×15mm大,尾側像は楕円形・27×21×2mm大でいずれも辺縁が濃染しダイナミックカーブは2~3型を呈した.嚢胞腺癌を疑診するが多発性で膿瘍の可能性があるとされた.左乳房異常なし.以上よりT2N0M0病期2A右外上乳癌を疑診した.右外尾側乳房腫瘤穿刺により3.2mlの灰白色粘稠な液体をえて細胞診・細菌検査を施行した.細菌検査:陰性.細胞診検査:陰性.炎症性細胞が多数,組織球も見られたが上皮細胞や異型細胞も認めず.悪性は否定的で経過観察とした.X+1年3月(初診約7か月後)再診時のUS:内部不均質な充実性腫瘤像を認めた.パワードプラ検査で腫瘤像内部に縦走する2条の血流シグナルを認めた.造影USでは腫瘤像に一致して非常に豊富で均一な血流を認めた.GMを疑診し病理検査を施行した.US乳腺穿刺術:11:30の扁平な楕円形腫瘤像を穿刺したが液体は吸引されず局所麻酔下に針生検した.GMの病理診断をえたが無症候のため経過観察中である.ところでGMは,組織球や好中球,リンパ球,形質細胞などの炎症細胞の浸潤を特徴とする良性炎症性疾患である.皮膚の発赤をともなう有痛性乳房腫瘤を呈しUSで膿瘍を示唆する低エコー像が描出される場合や,MGやUSなどで境界不明瞭な腫瘤像を呈して悪性腫瘍を疑診されることもある.本例のような無症候例では病理検査と経過観察が極めて重要である.US検診が契機となり診断にいたったGMの1例を報告した.今後乳がん検診の普及にともない無症候GMの検出される機会も増加すると考えられ報告した.