Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例2

(S601)

出血壊死にて増大を示した乳管内乳頭腫の1例

A case of intraductal papilloma that showed increase the size by hemorrhagic infarction

角田 好江, 吉原 桂, 鯨岡 結賀, 市岡 恵美香, 原 尚人

Yoshie KAKUTA, Katsura YOSHIHARA, Yuka KUJIRAOKA, Emika ICHIOKA, Hisato HARA

1筑波記念病院放射線部, 2筑波記念病院放射線科, 3筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科, 4筑波大学医学医療系乳腺甲状腺内分泌外科

1Department of Radiology, Tsukuba Memorial Hospital, 2Department of Radiology, Tsukuba Memorial Hospital, 3Department of Breast-Thyroid-Endocrine Surgery, Tsukuba University Hospital, 4Department of Breast-Thyroid-Endocrine Surgery, University of Tsukuba Institute of Clinical Medicine

キーワード :

【はじめに】
乳管内乳頭腫(intraductal papilloma: IDP)は出血・梗塞を起こしやすい病変として知られている.今回我々は,経過中に出血壊死により軽度の増大と造影超音波(CEUS)での染影に変化をきたしたIDPの症例を経験したので報告する.
【症例報告】
症例は47歳女性.2010年の検診では異常なし.2014年の検診にて右6時に混合性腫瘤を初めて指摘された.超音波検査にて右6時乳頭下に13.4x9.5x8.4mm,辺縁にわずかに無エコーを有する混合性腫瘤を認め,カラードプラでは腫瘤内に入り込む豊富な血流が見られた.CEUSでは造影10秒後より腫瘤の乳頭側から染まりはじめ,15秒後には全体に均一で強い染影を認めた.造影後のカラードプラではvascular stalkが明瞭化した.超音波ガイド下針生検にてIDPの診断となり定期的な検診受診となった.その後,2016年7月に血性乳頭分泌を自覚して再来院.超音波検査では腫瘤が17.0x14.9x10.5mmと増大していた.内部エコーは不均質で,カラードプラでの腫瘤内部の血流は前回よりも少なかった.CEUSでは初回の検査でvascular stalkが見られた付近に造影10秒後に脈管の描出が見られたが,腫瘤内部には染影を認めなかった.針生検にて高度に壊死した乳頭状病変が確認され,免疫組織化学的評価ではCK5/6はモザイク状の陽性パターン,ERは弱陽性~陰性であった.
【考察】
IDPは出血・梗塞を起こしやすいとされるが,その原因は不明である.妊娠や授乳,IDPの形態的な特徴から軸捻転が生じて虚血が惹起される等が要因として報告されている.2回のCEUS所見の比較ではvascular stalk部の血管の途絶とそれに伴う染影の欠損が見られ,腫瘤の増大や内部エコーの変化はそれに伴う2次的な変化であることが示唆された.今後同様の所見が得られた場合には不要な生検を回避することができると考える.また,乳管内・嚢胞内病変においてCEUSの所見を経時的に比較するためには,カラードプラにて腫瘤に関与する脈管をきちんと同定し,これをもとに撮像断面を決める必要があると考えられた.