中村 卓, 平井 都始子, 小林 豊樹, 田中 幸美, 丸上 永晃, 丸上 亜希, 中井 登紀子, 大林 千穂, 庄 雅之

Takashi NAKAMURA, Toshiko HIRAI, Toyoki KOBAYASHI, Yukimi TANAKA, Nagaaki MARUGAMI, Aki MARUGAMI, Tokiko NAKAI, Chiho OBAYASHI, Masayuki SHO

¹名張市立病院乳腺外科, ²奈良県立医科大学附属病院消化器外科・小児外科・乳腺外科, ³奈良県立医科大学附属病院総合画像診断センター, ⁴奈良県立医科大学附属病院病院病理部

¹Breast Surgery, Nabari City Hpsital, ²Department of Surgery, Nara Medical University, ³Department of General Diagnostic Imaging Center, Nara Medical University Hospital, ⁴Department of Diagnostic Pathology, Nara Medical University

キーワード :

【症例】
49歳，女性．
【主訴】
右乳頭血性分泌．
【現病歴】
2015年の秋頃から右乳頭の血性分泌があり，2016年2月精査目的に奈良医大を紹介され受診した．
【既往歴】
47歳　びまん性大細胞型B細胞リンパ腫（血液内科で治療終了，過観察中）
【身体所見】
異常所見なし．
【マンモグラフィ】
不均一高濃度乳腺．右乳房に淡く不明瞭～線状の石灰化を認め，拡大Spot撮影では背景にFADを伴っているように描出．
【乳房超音波検査】
右EA領域に拡張乳管を認め，その内部にだるま状の充実性病変を認めた．充実部分は9×16mm大で拡張乳管を含めて26mm程度．充実部分の辺縁には石灰化を思わせる点状高エコーが多発していた．画像上は乳管内乳頭腫を疑う所見だった．
【穿刺吸引細胞診】
鑑別困難．
【乳房造影MRI】
超音波検査と同様に，拡張した乳管内の充実病変として捉えられた．ダイナミック撮像では充実部分はゆっくり弱く染まっており，良性パターンであった．MRIでも充実部分のサイズは超音波検査とほぼ同じで，乳管拡張を含めて26mm程度だった．
【乳房造影超音波検査】
だるま状の充実部分は，約20秒後から辺縁部が強く染まり，28秒後に造影強度はピークに達した．その同じタイミングで内部が徐々に染まりはじめ，35秒程度で内部はやや不均一に染まった．積算画像では，40秒以降も染影が持続し，内部は均一に造影された．積算のタイミングや長さによって病変の均一・不均一の程度が異なって描出されており，内部性状から良悪性の鑑別は困難と考えられた．少なくとも，限局性病変であることから，乳管内に留まる良性の病変，乳管内乳頭腫を一番に考え，非浸潤癌が混在している可能性を鑑別にあげた．
【経過】
2016年5月　確定診断目的に右乳房腺葉切除術を施行した．
【病理結果】
上皮細胞からなる小腺腔を取り囲む筋上皮細胞の増殖より成る腫瘍であり，腺筋上皮腫に相当する像と判断された．筋上皮系細胞には核腫大・核形不整が目立ち，核分裂像も多数認められ，腺筋上皮腫より発生した筋上皮癌と診断された．
【経過】
追加切除も提案したが，患者が経過観察を希望したため経過観察中．
【考察】
腺筋上皮種は腺上皮細胞と筋上皮細胞からなる腫瘍で，乳管上皮細胞の周囲に筋上皮細胞の増生を認める疾患である．画像所見に特徴的な所見はない．まれであるが悪性化するものもあると報告されている．
【結語】
腺筋上皮腫より発生した筋上皮癌の造影超音波像を文献的考察を加え報告する．