Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例1

(S599)

IgG4関連乳腺炎の一例

A case of immunoglobulin G4-related mastitis

内山 なおみ, 大川 由美, 本間 壽大, 竹井 俊樹, 臼渕 浩明, 辻 隆裕, 深澤 雄一郎, 嶺田 志保, 野崎 正行, 高橋 俊司

Naomi UCHIYAMA, Yumi OKAWA, Toshihiro HONMA, Toshiki TAKEI, Hiroaki USUBUCHI, Takahiro TSUJI, Yuichiro FUKASAWA, Shiho MINETA, Masayuki NOZAKI, Shunji TAKAHASHI

1市立札幌病院検査部, 2市立札幌病院乳腺外科, 3市立札幌病院放射線診断科, 4市立札幌病院病理診断科

1Department of Laboratory, Sapporo City General Hospital, 2Department of Breast Surgery, Sapporo City General Hospital, 3Department of Diagnostic Radiology, Sapporo City General Hospital, 4Department of Pathology, Sapporo City General Hospital

キーワード :

【はじめに】
IgG4関連疾患は,高IgG4血症と線維化による結節,肥厚性病変などを認める原因不明の全身性疾患である.本疾患は,膵,肝胆,唾液腺,涙腺,後腹膜腔などの他,乳腺においては乳腺炎の一部がIgG4関連疾患であることが報告されている.今回われわれは,乳腺に腫瘤を形成したIgG4関連乳腺炎の一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
【症例報告】
症例は50歳代女性.嘔吐,頭痛,胸苦を訴え近医に受診.CTにて右乳腺腫瘤を指摘され,精査,加療目的に当院乳腺外科へ紹介となった.
既往歴は,解離不安障害,糖尿病,高脂血症,関節リウマチ.家族歴は特記事項はなし.血液,生化学検査に明らかな異常はなく,腫瘍マーカーは陰性であった.視触診で右CD領域に3cm大,右腋窩に2.5cm大の硬いしこりを触知し,マンモグラフィでは,右C領域にスピキュラを伴う高濃度腫瘤と右腋窩リンパ節の腫大を認めた.超音波検査では,右C領域9時方向に38mmと右A領域1時方向に20mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤,右C領域11時方向には低エコー領域を認め,病変周囲には広範囲な高エコーを伴っていた.また,右腋窩リンパ節の腫大を認めた.対側の乳腺と腋窩には明らかな異常は認めなかった.前医CTでは,右AC領域に数mmから27mmの均一な増強効果を呈する不整形腫瘤の集簇を認め,全体で64mmの広がりを認めた.その他の臓器に明らかな異常は認めなかった.乳癌としては典型的ではないものの悪性を否定できない所見であった.精神疾患の合併により,その他画像検査や針生検による精査が困難であり,外科的に迅速生検を加えた右乳腺部分切除術を施行する方針となった.
病理組織所見は,悪性の所見は認められず,単核球浸潤と線維化が目立っていた.また,IgG4陽性細胞は10/HPF以上と多く,IgG4/IgG陽性細胞比が40%以上であり,IgG4関連乳腺炎を疑う所見であった.追加の血液検査では,IgG4:316mg/dl,IgG4/IgG比18%と上昇を認めた.
【考察】
IgG4関連疾患は全身疾患であり,悪性腫瘍との鑑別が重要である.さらに近年,本疾患への悪性腫瘍合併例が報告され注意が必要である.超音波検査上,乳腺炎を疑う所見を呈した場合には,IgG4関連疾患も考慮する必要がある.