持冨 ゆかり, 髙木 理恵, 大井 恭代, 佐々木 道郎, 相良 吉昭

Yukari MOCHITOMI, Rie TAKAKI, Yasuyo OOI, Michiro SASAKI, Yoshiaki SAGARA

¹社会医療法人博愛会相良病院生理機能検査室, ²社会医療法人博愛会相良病院病理診断科, ³社会医療法人博愛会相良病院放射線診断科, ⁴社会医療法人博愛会相良病院乳腺科

¹Physiology, Sagara Hospital, ²Pathology, Sagara Hospital, ³Radiology, Sagara Hospital, ⁴Breast Surgery, Sagara Hospital

キーワード :

【はじめに】
明細胞汗腺腫は，汗腺由来の良性皮膚付属器腫瘍であり稀に乳腺にも発生するがその超音波像は明らかでない．今回，乳腺明細胞汗腺腫を経験したので報告する．
【症例1】
40歳代女性．血性乳頭分泌を自覚し受診された．超音波検査では右A領域に9×8×8mm大の混合性腫瘤をみとめた．充実部の立ち上がりは広基性で，血流シグナルは認めなかった．カテゴリー4で嚢胞内癌（非浸潤性乳管癌）もしくは乳頭腫を疑う所見であった．針生検施行されたが悪性が否定できなかったため摘出生検が行われ明細胞汗腺腫と診断された．
【症例2】
30歳代女性．検診にて腫瘤を指摘され精査目的で受診された．超音波検査では左AC領域に16×13×10mm大の混合性腫瘤を認めた．充実部の立ち上がりは広基性で血流シグナルは認めなかった．カテゴリー4で嚢胞内癌（非浸潤性乳管癌）もしくは乳頭腫を疑う所見であった．穿刺吸引細胞診が施行され結果良性であった．約半年後再受診され大きさ15×11×11mm大と変化なかったが内部エコーに変化を認め針生検が施行され明細胞汗腺腫の可能性が高いと診断された．非浸潤性乳管癌（以下，DCIS）も完全には否定できず摘出生検が施行され明細胞汗腺腫と診断された．
【検討】
いずれの腫瘤もまず嚢胞内癌（非浸潤性乳管癌）を疑う超音波像を呈していたため，当院で超音波所見にて混合性腫瘤のみを認め，最終病理診断にてDCISと診断された症例との比較を行った．いずれの腫瘤も立ち上がりが広基性の充実部を有していた．腫瘤境界部の性状は明細胞汗腺腫の方が粗造であった．血流シグナルは明細胞汗腺腫では，内部に流入する明らかな血流シグナルを認めなかったが，DCISでは認められた．
【結語】
今回，乳腺内に発生した明細胞汗腺腫を経験したので報告した．いずれの腫瘤も嚢胞内腫瘤としてみられ嚢胞内癌との鑑別を要する所見であったが超音波所見のみでの良悪の鑑別は非常に困難であった．今回比較対象となった嚢胞性腫瘤像を呈するDCISはいずれも低悪性度であり生命予後に影響しない癌であるとも言え，この様な嚢胞性腫瘤像を呈する所見は，今後検討の余地があると思われた．