Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例1

(S597)

乳腺超音波で乳癌と鑑別困難であった血管腫の1例

A case report of breast hemangioma

玉城 真奈美

Manami TAMASHIRO

社会医療法人敬愛会中頭病院臨床検査部

Clinical Laboratory Department, Nakagami Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺血管腫は乳房に発生する良性非上皮性腫瘍で,発生頻度が乳腺腫瘍の約0.4%とされる稀な腫瘍である.今回,超音波検査で乳癌を疑った乳腺血管腫の1例を経験したので報告する.
【症例】
82歳女性.乳癌検診にてMMG検査で右カテゴリー3で要精査となり,精査のため当院受診.
【視触診】
腫瘤触知なし
【マンモグラフィ】
乳腺脂肪性
右:X領域に高濃度の境界明瞭な分葉形腫瘤 カテゴリー3
左:異常なし カテゴリー1
【超音波検査】
右乳房C’領域に6×6×6mm大の不整形な低エコー腫瘤を認めた.境界は明瞭粗ぞうで内部エコーは比較的均一であるものの,脂肪織内に位置しており前方境界線断裂を疑った.腫瘤近傍に血流を認めるも,腫瘍内部へ流入する明らかな血流は認めなかった.エラストグラフィでは一部硬めに表示され,年齢を考慮し乳頭腺管癌や硬癌を疑った.
【病理組織診】
針生検が施行され,病理組織診断にて良性の血管腫と診断された.
【経過】
高齢であったため,切除はせずに年一回の超音波検査とマンモグラフィ検査で経過をみることとなった.
【考察】
本症例では腫瘍内部の血流シグナルが乏しいことやhalo形成がはっきりしないことは悪性所見から乖離していたが,腫瘍の形状が不整であり,腫瘍発生部位が脂肪織内だったことや年齢を考慮し乳癌を疑った.当院では2009年7月から2016年10月までの間に本症例以外に3例の乳腺血管腫を認めており,本症例と併せて超音波所見を検討してみた.
4例中3例に,境界明瞭粗ぞう/不明瞭,内部均一,腫瘤近傍の血流,脂肪織内に存在するという所見が得られ,3例とも乳癌が疑われた.形状・内部エコーレベルは楕円形2例,不整形2例,等~低エコーと様々であった.乳腺血管腫の超音波所見に特異的な所見が乏しいのは,腫瘍を構成している血管腔の大きさや血管内腔の血栓化の程度がエコー性状を多様化するためと考えられた.
【結語】
今回乳腺に発生した血管腫を経験した.乳腺血管腫の超音波像は多様であり特異的な所見に乏しく病理診断は必要不可欠である.また,血管肉腫との鑑別も重要で厳重な経過観察が必要と考えられた.