Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例検討

(S593)

授乳期乳腺疾患の超音波所見

Ultrasonography findings of the breast disease in the lactation period

濱田 信一, 石川 正志, 松山 和男, 鎌田 正晴, 田村 貴央, 香川 智洋, 乾 宏彰, 大和 幸子

Shin-Ichi HAMADA, Masashi ISHIKAWA, Kazuo MATSUYAMA, Masaharu KAMADA, Takao TAMURA, Tomohiro KAGAWA, Hiroaki INUI, Yukiko YAMATO

1四国中央病院健康管理科, 2四国中央病院外科, 3四国中央病院産婦人科

1Health Care, Shikoku Central Hospital, 2Surgery, Shikoku Central Hospital, 3Obstetrics and Gynecology, Shikoku Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
妊娠・産褥期乳房は産後の乳汁分泌のために,形態的にも機能的にも絶えず変化をし続ける.特に授乳期における乳房の変化は著しく,この時期の乳腺疾患の鑑別診断を難しくしている.授乳期における乳腺疾患の診断の際に,超音波検査が施行される機会はこれまで多くなかった.そしてその超音波所見も十分検討されていないのが現状である.今回,授乳期に遭遇する代表的な乳腺疾患の5症例を報告し,その超音波所見を提示する.
【症例】
症例1は22歳,正常分娩後3日目に右乳房の急速な増大を訴えた.超音波検査を施行したところ,右乳房に長径12cmの境界明瞭平滑な充実性腫瘤を認めた.腫瘍は急速に増大しているため摘出手術が施行された.病理検査の結果は授乳性腺腫であった.症例2は33歳,帝王切開による分娩後,乳頭からの乳汁分泌は非常に少なかった.両側乳房に硬結が触知され,分娩後10日目頃よりその硬結は増大した.超音波検査にて両側の乳房内に内部エコーを有する不整形の嚢胞性病変を認めた.ドレナージを施行したところ多量の乳汁が排出され,乳瘤と診断した.症例3は27歳,正常分娩後4日目に乳房の硬結を自覚した.超音波検査を施行したところ,病変部に複数の乳管の著明な拡張所見を認めた.その後,乳房マッサージや搾乳などの処置で症状は軽減し,乳汁うっ滞と判断された.症例4は30歳,正常分娩1年3か月後に右乳房硬結と疼痛,発熱を訴えて来院した.超音波検査を施行したところ,異常な乳管拡張などの所見は認めなかった.しかし正常授乳期乳腺の構築が保たれたまま病変部乳腺のエコーレベルが低下していた.その後,乳房マッサージや搾乳などの処置で症状は軽減し,乳汁うっ滞と判断された.症例5は33歳,正常分娩4か月後に左乳房の硬結,疼痛を訴え来院した.超音波検査を施行したところ,皮膚の肥厚や間質のエコーレベルの上昇を認めた.また乳腺の間隙を縫うような低エコー像を認め,膿瘍が疑われた.化膿性乳腺炎と診断してドレナージを施行し,抗生剤を併用して治療した.
【考察】
授乳期の乳腺トラブルは非常に多い.しかしこの時期に乳房の腫脹や硬結を認めても,先ず頻度の高い乳汁うっ滞や乳腺炎などと判断することが多い.そしてそのことが授乳期乳癌の診断の遅れにつながっていると指摘されている.授乳期乳腺疾患の診断においては,超音波検査が有用であると考えられる.しかし,その所見は意外と明らかにされていない.今後さらに症例を集積して,授乳期乳腺疾患の超音波所見を検討していく必要があると思われた.