Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
症例検討

(S591)

Triple negative乳癌におけるtumor-infiltrating lymphocytesと超音波所見

Relationship between tumor-infiltrating lymphocytes and ultrasound features with triple negative breast cancer patients

稲垣 麻美, 太田 大介, 辻 宗史, 小林 佑哉, 森 正也, 福内 敦

Mami INAGAKI, Daisuke OTA, Munechika TSUJI, Yuya KOBAYASHI, Masaya MORI, Atsushi FUKUUCHI

1三井記念病院乳腺内分泌外科, 2三井記念病院病理診断科

1Breast and Endocrine surgery, Mitsui Memorial Hospital, 2Pathology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【背景】
Triple negative乳癌(TNBC)における,高度なtumor-infiltrating lymphocytes(TILs)の存在は予後良好な指標である.高度なTILsを伴うTNBCの超音波所見の特徴はまだ明らかではないが,MRIではTNBCの特徴である周囲に圧排性に増殖するような腫瘤がより多く見られると言われている.
【目的】
TNBC病変におけるTILsの程度による超音波所見の相違について検討した.
【対象と方法】
2009年から2015年に手術を施行したTNBC患者を対象に,超音波所見は治療前のものをretrospectiveに評価し,ドプラ所見は血流量(vasculality)と血流形態・分布について評価した.増殖パターンは,2008年の論文を参照に,乳管に沿って増殖するパターン(typeA1),周囲に圧排性発育するもの(typeA2),周囲を引き込む不整形の腫瘤(typeA3),それらの混合したパターンやそれらに属さないもの(その他)に分類した.TILsは,腫瘍内の癌病巣間の間質のリンパ球占有率が75%以上のものをhigh TILs,75%未満のものをlow TILsとし,術前化学療法施行例では治療前の生検標本で,術前治療が無い症例では手術標本で評価した.
【結果】
対象は97病変,95人のTNBC患者で,年齢中央値62歳(38-88),術前化学療法は37人で施行された.high TILsは12病変(12.4%),low TILsは85病変(87.6%),c stageはⅠ,Ⅱ,Ⅲがそれぞれ36病変(37.1%),51病変(52.6%),10病変(10.3%)で,組織型はInvasive ductal ca.が82病変(84.5%),apocrine ca.が4病変(4.1%),invasive lobular ca.とspindles ca.が各3病変(3.1%),adenocystic ca.,sarcomatoid ca.,secretory ca.が1病変(1.0%)であった.超音波所見とTILsの結果は表に示した.high TILsはlow TILsに比較して,超音波所見の形状では円形/楕円形,分葉状が12病変(100%)と多く見られ(p=0.002),境界は明瞭粗造が11病変(91.7%)と多くに見られた(p=0.020).また,増殖パターンはhigh TILsで8病変(66.7%)とlow TILsの32病変(37.6%)と比較して多く見られた(P=0.056).ドップラ所見では,血流量,血流の分布においてTILsによる明らかな相違はみられなかった.
【考察】
血流の分布のうち,周囲の血流増加は周囲を引き込む増殖パターンで見られる傾向が考えられ,周囲に圧排性発育するパターンの多いTNBCでは少数しか見られず,より高度なTILsではその傾向が強く見られたと考えた.
【結語】
TNBCにおける高いTILsでは,MRIと同様に超音波でもよりTNBCの特徴的な所見を示す傾向が見られた.