Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
Her2陽性乳癌

(S589)

HER2過剰発現乳癌の超音波画像の検討-ホルモン受容体発現の有無で違いはあるか-

Ultrasound images of HER2 positive breast cancer: Whether there is difference by a presence of hormone receptor manifestation

前田 奈緒子, 吉本 賢隆

Naoko MAEDA, Masataka YOSHIMOTO

1よしもとブレストクリニック検査, 2よしもとブレストクリニック外科

1Laboratory, YOSHIMOTO BREAST CLINIC, 2Surgery, YOSHIMOTO BREAST CLINIC

キーワード :

【はじめに】
当学会の第34回学術集会において,HER2過剰発現乳癌における超音波(US)画像の特徴的所見は,縦横比が比較的低値であること,乳管内進展を示唆する所見,さらに主病巣内に点状高エコーを高率に認めることを報告した.HER2過剰発現乳癌はさらにホルモン(HR)受容体発現の有無により,HER2 Rich type(HER)とLuminal HER2 type(L-HER)に分類されることより,今回は両者におけるUS画像の特徴的所見の違いを検討した.
【対象】
2012年2月~2016年11月までの当院における乳癌手術症例は220例であった.そのうちHER2過剰発現を認めた浸潤性乳管癌27例を検討の対象とした.内訳はHER 11例(年齢中央値58歳:42~68歳),L-HER 16例(年齢中央値47歳:26~83歳)であった.
【方法】
以下の4項目について検討した.
①縦横比:腫瘍径の計測が困難なものは除外した.
②乳管内進展を示唆する所見:主病巣から延びる拡張乳管や娘結節,周囲の点状高エコー.
③点状高エコー:主病巣内および周囲の石灰化を示唆する点状高エコー.(②の点状エコーと重複)
④発育形態:圧排型,乳管型,浸潤型の3型に分類した.
【結果】
縦横比はHERでは中央値0.52(0.29~0.89),L-HERは中央値0.50(0.22~0.87)であった.乳管内進展を示唆する所見は,HERでは7例(63.6%),L-HERは10例(62.5%)で認めた.点状高エコーは,HERでは5例(45.5%),L-HERは7例(43.8%)で認めた.HERは圧排型4例(36.4%),乳管型3例(27.2%),浸潤型4例(36.4%),L-HERは圧排型3例(18.8%),乳管型9例(56.2%),浸潤型4例(25.0%)であった.乳管型の発育形態はL-HERで多い傾向にあったが,いずれの項目においても有意差は認めなかった.
【考察】
術前化学療法を施行した7例を除く20例中17例(85.0%)で,病理組織において主病巣内あるいは周囲にcomedo型が主体の乳管内病変を認め,それぞれの割合はHER 6/7例(85.7%),L-HER 11/13例(84.6%)と有意差は認めなかった.comedo型が主体の乳管内癌巣を裏づけるように,USでも乳管内進展を示唆する所見や点状高エコーを認めた.点状高エコーを認めた症例は,病理組織でも全例で壊死型の石灰化を認めた.病理組織においても両者に明らかな違いを認めず,US画像の検討結果とも合致している.
【結語】
今回の検討では,HER2過剰発現乳癌における,HR受容体発現の有無による特徴的所見の違いを見出すことができなかった.症例数を増やして,今後の検討課題としたい.