坂井 由紀子, 山口 純子, 井上 幸子, 田中 久美子, 手島 伸一

Yukiko SAKAI, Junko YAMAGUCHI, Sachiko INOUE, Kumiko TANAKA, Shinnichi TESHIMA

¹湘南鎌倉総合病院検査部, ²湘南鎌倉総合病院乳腺外科, ³湘南鎌倉総合病院病理診断部

¹Clinical Laboratory, Shonankamakura General Hospital, ²Department of Breast Surgery, Shonankamakura General Hospital, ³Pathological Diagnosis Department, Shonankamakura General Hospital

キーワード :

【目的】
Her2陽性乳癌は乳癌全体の約20％と言われている．今回，乳腺外科開設以降に当院で経験したHer2陽性乳癌（Her2単独陽性及びLuminal Her2）の超音波画像を任意の対照群と比較し，Her2陽性乳癌（以下Her2乳癌）に特徴的な所見がないか検討した．
【方法】
対象は2013年3月～2016年11月の原発性乳癌手術278例中，Her2乳癌と診断された39例（全体の14％）．対照群は2014年にHer2陰性の原発性乳癌48例とした．年齢はHer2乳癌で29～89歳（平均63.3歳），対照群で39～89歳（平均62.8歳）．Her2乳癌のUSにおける腫瘍径，形状，後方エコー，バスキュラリティ，エラストスコア，点状高エコーの有無を対照群と比較した．また，MGが撮影された例において，石灰化の有無も検討した．
【結果】
腫瘍径は，2cm以下が対照群50％に対して，Her2群30％，4cm以上が対照群8％に対してHer2群31％と中央値でもHer2群の方が対照群よりも有意に大きかった（Her2群：中央値32mm（8～72mm）　対照群：中央値48.5mm（7～104mm））．形状では，円形・類円形と分葉状の占める割合は変わらないものの（合わせて全体の15％程）対照群では不整形が86％と大部分を占めたのに対し，Her2群では不整形67％，低エコー域18％と非腫瘤性の所見が目立った．後方エコーは，増強が対照群37％に対してHer2群では72％と有意に高かった．点状高エコー有りも対照群31％に対してHer2群64％で有意に高かったが，バスキュラリティ，エラストスコアに関してははっきりとした差を認めなかった．
【考察】
後方エコーは腫瘍内部の細胞密度や水分量を反映しており，Her2陽性乳癌における充実性の増殖態度を反映している可能性があると考えた．点状高エコーが随伴する頻度も高く，可能な範囲でMGにおける石灰化の頻度も調べたところ（Her2群54％，対照群27％）同様に高い結果となった．
【まとめ】
今回の検討ではHer2乳癌はHer2陰性の乳癌と比較して後方エコー増強と点状高エコーに関して有意差がみられた．