Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
手技・検査法

(S586)

乳がん検診におけるComprehensive ultrasoundの有用性

Usefulness of Comprehensive ultrasound in breast cancer screening

水藤 晶子

Akiko MIZUTOU

1多度津三宅病院乳腺甲状腺外科, 2川崎医科大学総合外科学

1Department of Breast and Thyroid Surgery, Tadotsu Miyake Hospital, 2Department of General Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

【目的】
乳がん検診における超音波検査の有用性を検証するための比較試験(J-START)の結果が発表され,乳がん検診において,マンモグラフィ(MMG)に超音波検査(US)を加えることで早期乳癌の発見率が向上することが示された.しかし,癌発見率だけではなく要精査率も上昇することが示され,特異度が低いという問題点も明らかとなった.
J-STARTにおいてはMMGとUSの判定を独立判定とし,いずれかのモダリティでカテゴリー3以上となったものを要精査としたため,要精検率が上昇したものと考えられ,MMGとUSの併用検診では2つの検査結果を総合的に判断する総合判定の実施が推奨されている.
USにおいてはBモードでの判定が基本であるが,要精査率を下げ,不要な侵襲的検査を避けるために当院では検診においてもカラードプラ,エラストグラフィを併用するComprehensive ultrasoundを積極的に行っている.当院におけるMMG/US併用任意検診の成績からComprehensive ultrasoundの有用性について示す.
【対象・方法】
2015年1月~2016年12月に当院にて同時併用・総合判定方式にてMMG/US併用任意型検診を受診した5,283名のうち,腫瘤性病変を認め,組織学的に良悪性の診断の得られているもの及び2年間の経過が確認でき,良性と判断できた160病変を対象とした.
【結果】
160病変のうち,悪性は28例,良性は132例であった.悪性のうち,USのみで病変が認められたものは8例(28.6%),MMGでもUSでも異常を認めたものが20例(71.4%)であった.USで所見がなくMMGのみで検出された症例はなかった.悪性例のUS所見はいずれもBモードでカテゴリー3以上と判定され,Comprehensive ultrasoundを行うことで全例がカテゴリー4以上と判定された.良性例においては,USのみで病変を認めるものが98例(74.2%),MMGとUSいずれにおいても腫瘤像を認めたものが34例(25.8%)であった.良性と判断された病変のうち,12例はBモードのみではカテゴリー3と判定されたが,Comprehensive ultrasoundを施行し,カテゴリー2となった.これら12例はいずれも組織学的に良性と判定されるか,2年間の経過をretrospectiveに確認し,良性と判定された.また,Bモードでカテゴリー2と判定されたもののComprehensive ultrasoundでカテゴリー3と引き上げられた症例が5例あった.5例のうち3例は濃縮嚢胞,1例は線維腺腫,1例は乳管内乳頭腫であった.
【考察】
MMG/US併用検診においてUSにComprehensive ultrasoundを併用しても,予後にかかわる乳癌の検出に寄与することはなく,判定の基本はBモードである.しかし,Comprehensive ultrasoundを併用することでカテゴリーを落として不要な侵襲的検査を避けることが可能であり,診断能の向上や効率の良い検診体制の構築に寄与すると考えられる.