Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
手技・検査法

(S585)

腫瘤内血管を伴う乳腺腫瘍のstrain ratioの有用性

Usefulness of strain ratio for the assessment of breast tumors with tumor vessels

今野 佐智代, 竹川 英宏, 江尻 夏樹, 川又 美咲, 高瀬 直敏, 吉原 明美, 髙田 悦雄

Sachiyo KONNO, Hidehiro TAKEKAWA, Natsuki EJIRI, Misaki KAWAMATA, Naotoshi TAKASE, Akemi YOSHIHARA, Etsuo TAKADA

1獨協医科大学病院超音波センター, 2獨協医科大学神経内科, 3那須赤十字病院放射線科超音波診断部

1Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University Hospital, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 3Department of Ultrasonic Diagnosis, Nasu Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
乳腺腫瘍の悪性診断では2Dリアルタイムエラストグラフィー(2D RTE)の有用性が知られている1).また,脂肪と腫瘤の歪みの比であるFLR(Fat Lesion Ratio)の有用性も報告されており,これらの組み合わせにより良悪性診断がなされる2)3).一方,乳腺腫瘤では腫瘍内血管がない例は良性であることが多いが,近年は機器性能の向上により腫瘍内血管が観察される良性腫瘍もみられる.われわれは腫瘍内血管を伴う乳腺腫瘤において2D RTEおよびFLRを用いた良悪性診断の有用性について検討した.
【対象と方法】
腫瘤内血管を伴う乳腺腫瘤153例(平均年齢50.9歳,全例女性)を対象とした.良悪性の確定診断は細胞診または組織診で行なった.なお超音波診断上良性と診断され,2年以上経過観察し所見に変化がないものは良性と判断した.超音波診断はリニア型探触子(18-5MHz,HITACHI Ascendus)を用い,2D RTEおよびFLRを測定した.なお2D RTEはItohら1)の報告に準じ,elasticity score(ES)により5つに分類した.良性群と悪性群に分類し,両群のESおよびFLRの差および,ESごとに両群のFLRの差について検討した.統計はカイ二乗検定,マン・ホイットニーのU検定,ロジスティック回帰分析およびROC曲線を用いた.
【結果】
良性群は86例で悪性群は67例であった.良性群はES 5が,悪性群ではES 1となる例は存在しなかった.また良性群はES 2となる例が60.5%,ES 3が22.1%と多く,悪性群はES 4が25.4%,ES 5が62.7%を占めていた(p<0.001).一方FLRは良性群が2.50(中央値,範囲0.720-33.7),悪性群が7.69(1.81-71.0)と後者で有意に高値であった(p<0.001).またROC曲線ではFLR 4.10をカットオフ値とすると,悪性腫瘍の診断は感度88.1%,特異度79.1%であった.さらに単変量ロジスティック回帰分析ではFLR 4.10以上は悪性腫瘍と関係していた(p<0.001,オッズ比27.9,95%信頼区間11.3-68.7).しかし,ESごとにFLRの差をみると,両群に有意な差は得られなかった.
【考察と結論】
腫瘤内血管を伴う乳腺腫瘤の良悪性診断に対するESおよびFLRの有用性を検討した結果,良性腫瘤はES 2を悪性腫瘤はES 5を示し,FLRは悪性腫瘤が高値であり,4.10以上は悪性であることを示した.Itohら1)の報告にあるようにESは3以上の場合に悪性を疑う必要があり,悪性腫瘤において約1割はES 3を示していた.一方,FLRは2.9以上の場合に悪性とする報告や2),5.6以上とする報告3)もあり一定の見解がない.われわれの検討では4.10がカットオフ値であったが,ESごとに良悪性をみた場合FLRに差が得られておらず,腫瘤内血管の状況によりFLRに差がでる可能性が考えられる.今後,腫瘤への流入血管およびES別に適切なFLRのカットオフ値を求めていく必要がある.
【参考文献】
1)Itoh A, Ueno E, Tohno E, et al. Radiology 2006;239:341-50.
2)Farrokh A, et al. Ultraschall Med 2011;32:400-5.
3)Alhabshi SM, et al. Ultrasound Med Biol 2013;39:568-78.