Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
手技・検査法

(S585)

体表からの加振を用いたせん断波エラストグラフィの乳腺適用

Breast imaging by shear wave elastography using mechanical vibration from tissue surface

山越 芳樹, 中島 崇仁, 佐藤 亜矢子, 堀口 淳, 山崎 真有子, 谷内 華菜, 石森 愛乃

Yoshiki YAMAKOSHI, Takahito NAKAJIMA, Ayako SATO, Jun HORIGUCHI, Mayuko YAMAZAKI, Kana TANIUCHI, Yoshino ISHIMORI

1群馬大学大学院理工学府, 2群馬大学大学院医学系研究科

1Graduate School of Science and Technology, Gunma University, 2Graduate School of Medicine, Gunma University

キーワード :

【目的】
ARFIなどせん断波エラストグラフィは組織硬さの映像法として注目を集めているが,装置が高価,特定のプローブしか使えない,組織が非常に硬いと映像化が難しい,など課題がある.本稿ではARFIとは全く異なる映像化原理による我々が開発したせん断波エラストグラフィ(Color Doppler Shear Wave Imaging: CD SWI)を乳腺に適用したので報告する.
【方法】
CD SWIは体表に接触させる小型の加振器で周波数200-300Hzの振動を加えたときに組織内を伝播するせん断波を汎用のカラードプラ装置で画像化する.画像再生には超音波のPRFと同期した周波数で加振すること,せん断波の振幅がある値以上であることが必要になるが,実応用ではこれら2条件は大きな制約にはならない.この方法の特徴はすべてのプローブがせん断波エラストグラフィに使える,エコー装置の改造は不要でビデオ信号を外付けのPCに取り込むだけで良い,組織中を伝播するせん断波の様子が動画像でかつほぼ実時間で観測できる.加振器も電動歯ブラシに使われている小型のリニア振動モータが使える.CD SWI法をAcuson S3000(Siemens)に適用し乳癌の映像化を行った.プローブは18L6HD(ARFI非対応)でPre-compressionを避けるために乳腺に軽く接触させた.加振周波数は235.3Hzで加振器の先端には直径10mm,長さ20mmの加振ヘッドを取り付けた.まず複数のファントム(自作寒天,BB-04(OST社))に対してARFI法と比較実験を行ったが,一様ファントムではARFI法で測定した伝播速度との差は10%以下であり本方法の定量性が確認できた.内部に硬い構造を有するファントムでの実験ではARFI法では画像化できない場合でも本法では明瞭に画像化できることを確認した.図は乳癌で得たせん断波の伝搬像である.この画像はせん断波の伝播をせん断波波面の動きで表すもので隣り合う波面間隔が伝播速度に対応する.ROI中央の癌組織と周囲組織との伝播速度の違い,および癌組織内部の特徴的な波面伝播から癌の特定化が容易であった.
【結論】
廉価,定量性,汎用のエコー装置を改造することなく適用できるせん断波エラストグラフィを開発し乳癌の画像化を行った.結果から乳癌の新たな診断法としての可能性が示唆された.