Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 乳腺(JABTS)
手技・検査法

(S584)

通常よりも強い乳房圧迫下での走査を必要とした乳房超音波検査症例についての検討

Assessment of five cases which required strong breast compression during breast ultrasound

那須 初子, 平井 雪, 芳澤 暢子, 池田 暁子, 幸田 愛, 林 真帆, 廣瀬 裕子, 小倉 廣之, 阪原 晴海

Hatsuko NASU, Yuki HIRAI, Nobuko YOSHIZAWA, Akiko IKEDA, Ai KODA, Maho HAYASHI, Yuko HIROSE, Hiroyuki OGURA, Harumi SAKAHARA

1浜松医科大学放射線診断科, 2藤枝市立総合病院放射線診断科, 3浜松医科大学第一外科

1Diagnostic Radiology and Nuclear Medicine, Hamamatsu University School of Medicine, 2Diagnostic Radiology, Fujieda Municipal General Hospital, 3Surgery 1, Hamamatsu University School of Medicine

キーワード :

【目的】
乳房超音波検査においては乳房に過度の圧迫を加えないことが推奨されている.今回われわれは通常の走査では認識できず,病変の描出のために乳房に強い圧迫を加えざるを得なかった症例を経験したので,その特徴について報告する.
【対象】
2010年1月から2016年12月までに行った3000例の精検目的の乳房超音波検査のうち,病変の描出に乳房への強い圧迫を要し,かつ,通常の走査での画像と乳房に強い圧迫を加えた走査での画像の両方が閲覧可能であった5症例5個の病変を対象とした.
【方法】
全例フルデジタル超音波診断装置(HITACHI EUB-7500)にて,14-6 MHz(EUP-L65)もしくは13-5MHz(EUP-L74M)の電子リニア式探触子を用いた.乳房超音波検査の実施前には,これ以前に得られたCTやMRIを参照し対象病変を確認した.
【結果】
全例女性で,47-65歳(平均54歳)であった.全例が乳癌術前精査症例で,うち1例は術前化学療法後であった.超音波検査上,4個が極低もしくは低エコー腫瘤,1個が局所性斑状低エコー域として描出された.超音波検査上の病変の長径は,4-25.9mm(平均14.5mm)であった.病理所見は3個が浸潤癌非特殊型,1個が神経内分泌癌,1個が濃縮嚢胞であった.マンモグラフィにおける乳房の構成は4例が不均一高濃度,1例が乳腺散在であった.対象病変は,3個が外上から外下周辺部,1個が内外上中間部分,1個が乳輪部深部に存在した.乳房超音波検査における皮膚から病変表層までの距離は,通常走査下で14.7-27.7mm(平均20.1mm)で,強い圧迫走査下で7.5-15.5mm(平均11.0mm)であり,その差は7-12.2mm(平均9.0mm)であった.全病変の表層には比較的厚い脂肪組織が存在し,乳房超音波検査における乳腺表層脂肪組織の厚みは,通常走査下で9.2-24.7mm(平均14.0mm)で,強い圧迫走査下で2.2-13.3mm(平均6.3mm)であり,その差は5-11.4mm(平均7.6mm)であった.
【考察】
通常よりも強い乳房圧迫下での走査を必要とする浸潤癌症例が認められた.背景乳房の特徴は,乳腺表層の脂肪組織が比較的厚く,その深部に対象病変が存在した.脂肪組織が多い乳房では脂肪組織が少ない乳房に比べ音速が低いことが知られている.このため,通常の受信音速設定である1540m/secでの走査では誤差が大きくなり,画像が「ブレ」て表示される可能性が指摘されている.対策として,受信音速を症例ごとに変動できる装置が開発されているが,受信音速が可変でない状況下での走査では,通常よりも乳房を強く圧迫し,病変表層の脂肪組織の厚みを減少させることで,画像の「ブレ」を小さくする必要性が存在しうると考えられた.
【結論】
乳腺表層の脂肪組織が比較的厚い症例に対する乳房超音波検査では,通常よりも乳房への強い圧迫が必要な場合がある.
【参考文献】
1)乳房超音波診断ガイドライン 改訂第3版 日本乳腺甲状腺超音波医学会編
2)中島一毅,遠藤登喜子,池戸祐司ら,日乳癌検診学会誌2007,16:179-189