Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(頭頚部)

(S577)

口唇裂をきっかけに出生前診断された分葉型全前脳胞症の一例

A Case of Lobar Holoprosencephaly Diagnosed by Prenatal Ultrasonography Starting with Cleft Lip

玉田 祥子, 岡本 和浩, 牧 尉太, 江口 武志, 光井 崇, 衛藤 英理子, 早田 桂, 増山 寿, 平松 祐司

Shoko TAMADA, Kazuhiro OKAMOTO, Jota MAKI, Takeshi EGUCHI, Takashi MITSUI, Eriko ETO, Kei HAYATA, Hisashi MASUYAMA, Yuji HIRAMATSU

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室

Obstetrics and Gynecology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【緒言】
全前脳胞症は,胎生期に前脳の分割が不十分なために起こるとされており,無分葉型,半分葉型,分葉型に分類される.無分葉型は,単一脳室の著明な拡大や特徴的な顔面の形成不良から,胎児期に診断されることが多いが,分葉型の出生前診断は困難であると言われている.今回,口唇裂から顔面正中の異常が疑われ,胎児期に分葉型全前脳胞症の診断に至った症例を経験したので報告する.
【症例】
28歳,0経妊0経産.自然妊娠にて妊娠成立し,近医にて妊婦健診.妊娠27週時の妊婦健診にて胎児口唇裂が疑われたため,精査加療目的に妊娠31週1日で当院紹介となった.初診時の胎児超音波検査で,胎児推定体重(EFBW):1237g(-2.1SD)と胎児発育不全(FGR)を認めたため,妊娠33週1日より管理入院を行った.入院時の超音波検査で,BPD: 78.2mm(-1.0SD),HC: 25.79cm(-5.2SD),AC: 24.30cm(-1.9SD),FL: 58.1mm(-0.5SD),EFBW: 1535(-2.0SD)であり,HCが著明に小さく頭蓋がほぼ円形となっていた.また,口唇裂について詳細に観察したところ,正中唇顎口蓋裂が疑われた.その他の異常所見として,眼間狭小を認め,さらに透明中隔腔がはっきり見えず,脳梁欠損も疑われた.その他には心臓を含め,明らかな異常所見は認めなかった.頭蓋・顔面正中の異常所見から全前脳胞症が疑われ,脳室拡大を伴っていないことから,分葉型と診断した.胎児MRIでも同様の診断であった.FGRのため管理入院継続,その後陣痛発来し,妊娠38週1日に経腟分娩となった.児は2071gの女児で,Apgar score 3/7点(1分値/5分値)であった.出生後の染色体検査にて,13番染色体長腕部分トリソミー,短腕部分モノソミーと診断された.児は日齢108に気管切開,胃瘻造設術を施行され,日齢162に退院となった.
【結語】
口唇裂は,正中か,片側か,両側か,口蓋裂を合併しているか,によって合併奇形の内容や頻度が異なっており,正確な診断が必要である.正中唇裂を認めた場合には,頭蓋・顔面の異常を合併する頻度が高く,眼間距離の計測や頭蓋内の詳細な観察が診断の一助となる.本症例では,口唇裂をきっかけとし,顔面正中の異常が疑われ,出生前に分葉型全前脳胞症の診断に至った.