Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児スクリーニング・教育

(S574)

胎児心エコーの教育におけるSTIC遠隔配信勉強会の活用法

Current status of the remote training methods for fetal echocardiography using spatiotemporal image correlation (STIC)

増山 葉月, 川瀧 元良, 石井 陽一郎, 池田 申之, 竹中 俊文, 佐藤 雄一

Hazuki MASUYAMA, Motoyoshi KAWATAKI, Yoichiro ISHII, Nobuyuki IKEDA, Toshifumi TAKENAKA, Yuichi SATO

1産科婦人科舘出張佐藤病院検査部, 2東北大学産婦人科, 3群馬大学医学部附属病院小児科, 4産科婦人科舘出張佐藤病院産婦人科

1Department of Clinical Laboratory, Obstetrics&Gynecology TATEDEBARI SATO HOSPITAL, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Tohoku University, 3Department of Pediatrics, Gunma University Graduate School of Medicine, 4Department of Obstetrics and Gynecology, Obstetrics&Gynecology TATEDEBARI SATO HOSPITAL

キーワード :

【目的】
Spatiotemporal image correlation(STIC)は10秒程で胎児心臓全体をスキャンし,ボリュームデータを作り超音波診断装置上又はSTIC解析ソフトウエアの入ったPCで胎児心臓の3D画像の再構築ができる.しかしSTICデータを作るには専用の装置やプローブ,PCが必要となり,1次施設で利用している施設は少ない.今回はSTICデータを得るのではなく,得られた心疾患のSTICデータを利用し,実際のエコーを行っているような感覚で胎児心エコーを勉強するSTIC遠隔配信勉強会を当院で受講し,教育への活用法などの利点や課題について考えてみる.
【背景】
当院は年間約1500件の分娩がある1次施設である.1次施設でのスクリーニングの役割は,胎児異常を認めた場合妊娠中に2次施設に送り,出生後の新生児救急搬送を減らし,児の予後改善に寄与することである.当院でのスクリーニングは20~23週,28~29週,37週の計3回,超音波検査士1名,検査技師3名で行っている.分娩数が多いため,施設内でスクリーニング項目・方法などの統一,各種勉強会への参加で知識・技術アップに力を入れ,過去4年間では重症心疾患はほぼスクリーニングできており,重症心疾患による出生後の新生児救急搬送は1例もない.この精度を保ち,教育・レベルアップのための1つの方法として遠隔配信による勉強会を取り入れている.また里帰り妊婦等35週を超えて当院に来る場合も多く妊娠後期で心疾患が見つかることもあり,当院だけでなく地域全体・他施設のレベルアップも含め近隣の施設に参加を呼びかけている.遠隔配信による勉強会は2013年12月から2~3ヶ月に1回の勉強会を受講.2016年6月からSTIC遠隔配信が始まり当院では平均4施設・7人程度で計3回(2017年1月現在)延べ21人受講している.
【受講方法】
準備:当院での開催日程を決定,院内・近隣の施設に参加を呼びかける.事務局よりSTIC画像の入ったPCと資料が届く.当院ではPCの動作確認,事前視聴によりネットの通信状態確認.当日:PCを立ち上げネット上の録画放送に合わせて受講.PCは1~2名で1台を使用,症例のSTIC画像を自由に動かし実際に自分でエコーを見ているように勉強する.受講後:使用したPCを事務局へ返送.
【利点】
当院のような1次施設では正常例が多く,教育を受けても実際に心疾患を自分でスクリーニングする機会は少ない.STIC勉強会は,解説を聞きながら異常症例を実際のエコーを行っているようにマウスを動かすことで自分の見たい場所を自由に見る(経験・体感する)事ができる.そのため血管のつながりや血行動態の難しい症例も理解しやすい.また経験することで次に実際のスクリーニングで症例に出会えばその経験を活かし,気付くことができる.
【課題】
参加者は参加費を支払い当院に来ている為,受講中PCの動作が遅くなる,動かなくなることや通信の乱れ等が起きた時,会場となる当院では対応に困る.事前のPC動作チェックに時間と手間がかかる.専用PCが必要で参加費が高額のため毎回最低参加者数を集めるのが困難.
【今後の展望】
STICで異常症例を経験することで,簡便にスクリーニング精度向上が期待できる.参加費がもう少し抑えられればレベルアップや教育の1つの方法として活用しやすくなる.また現在は心疾患の症例を学んでいるが,スクリーニング初心者には多くの経験が必要であり正常のSTIC画像で胎位や動きに左右されず妊婦に負担をかけることなく心臓構造を把握することにも活用できる.