Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児スクリーニング・教育

(S573)

ISUOG診療ガイドラインに基づいた胎児心臓超音波検査システムについて考える

Consideration on fetal heart ultrasonic examination system based on clinical guidelines of ISUOG

瀧田 寛子, 松岡 隆, 新垣 達也, 大場 智洋, 仲村 将光, 関沢 明彦

Hiroko TAKITA, Ryu MATSUOKA, Tatsuya ARAKAKI, Tomohiro OBA, Masamitsu NAKAMURA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
先天性形態異常の発生頻度は約3~5%であり,中でも先天性心疾患は最も多く約1%である.2006年にISUOGから胎児心臓の超音波スクリーニングのガイドラインが発表され,2013年にupdateされた.また,2006年,日本胎児心臓病学会・日本小児循環器学会による胎児心エコー検査ガイドラインなどが発出されている.当院では2011年よりISUOGガイドラインを参考に,昭和大学方式の精密超音波検査システム(妊娠11~13週の初期精密超音波検査,妊娠18~20週の中期胎児精密超音波検査)を,当院分娩の全妊婦を対象に実施している.中でも妊娠中期精密超音波検査は精度の高いスクリーニングと位置付け,取りこぼしのないスクリーニングを行ってそのまま診断へとつなげることを目指している.
【目的】
妊娠中期に当院で心臓スクリーニング検査を施行した症例における,先天性心疾患の検出の現状を調べること.
【方法】
2011年6月から2016年11月までに昭和大学病院で妊娠初期および中期精密超音波検査を施行し,分娩した5861症例を対象にした.産婦人科専攻医が取得した画像を超音波専門医がDouble Checkし,確認しながら検査を行った.全ての正常所見を確認するまで検査終了とはせず,よって未確認項目はないことになる.胎位によって画像が得られない場合は一度退出,休憩をとって同日中に再検査を行う.胎児心臓描出画像は3VVなどViewにこだわらず,大血管の位置関係は四腔断面から連続的にそのつながりを確認していく方法を取っている.具体的には,①正確な四腔断面描出後,心臓の位置,心軸,四腔断面のバランス,心拍リズム,心嚢液の有無を確認する.②肺静脈の左房への流入,卵円孔,房室弁,心室中隔,四腔断面,心室弁の開閉,カラードプラを用いて弁逆流の有無の確認,心軸を垂直にして肺静脈確認,心軸を水平にして卵円孔をBモードだけでなく,カラードプラや指行性パワードプラを併用して確認する.③左室流出路と右室流出路,大動脈弓の形状及びそれぞれの狭窄,逆流の有無をカラーで確認する.④根拠となる証拠写真を動画および静止画で保存する.
【結果】
調査期間内に分娩した5861症例中,先天性心疾患は43例(0.73%)あり,初期に12例,中期で12例,出生後に診断されたものは19例であった.初期に診断されたものは単心室,左室低形成,心房心室中隔欠損,中期に診断されたものは心室中隔欠損症,ファロー四徴症,両大血管右室起始,完全大血管転位,心房心室中隔欠損症,大動脈狭窄,三尖弁閉鎖不全,右室低形成,肺動脈狭窄,大動脈狭窄であった.一方,出生後に診断された19例は心室中隔欠損がそのほとんどで,筋性部の小欠損であり,新生児期に入院管理や治療を要した症例はなかった.
【考察】
初期検査では四腔断面で異常所見を呈する心疾患が検出され,中期検査では流出路形態異常のみならず機能異常を検出することができた.2013年のISUOGガイドラインでは,color modeは異常血流を持つ先天性心疾患の発見や肥満症例の場合に発見の一助なるかもしれないと記されている.当院の結果からもcolor modeは異常血流の検出スクリーニングに有用であり簡便と思われ,積極的に使用すべきと考える.しかし,small VSD検出率はいまだに低く,描出方法や設定の改良が必要と思われた.一方で本検査法のlimitationは,検査に人員を要すること,時間を要することがあげられる.解決のためには妊婦健診システムの変更(オープンシステムや助産師外来など)にまで踏みこんだ改革が必要となるが,質の高いスクリーニング検査を提供するためにはこのような検査体制を検討すべきであると考える.