Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児スクリーニング・教育

(S572)

妊娠第1三半期における胎児超音波検査の現状とそのあり方についての考察

How different is the first trimester fetal ultrasound in our country from the ISUOG guideline: considering about the way to fill a gap

中村 靖, 藤田 聡子, 宋 美玄, 倉田 淑恵, 新川 裕美, 田村 智英子

Yasushi NAKAMURA, Satoko FUJITA, Mihyon SONG, Yoshie KURATA, Hiromi ARAKAWA, Chieko TAMURA

1FMC東京クリニック診療部, 2FMC東京クリニック医療情報・遺伝カウンセリング部

1Medical examination department, FMC Tokyo Clinic, 2Department of medical informations and genetic counseling, FDMC Tokyo Clinic

キーワード :

【目的】
妊娠第1三半期における胎児超音波検査は,当院における診療の主要な業務の一つであり,基本的にISUOGのガイドラインに則った検査を毎日行なっている.他院で受けた超音波検査所見をもとに受診されたケースから,本邦における妊娠初期超音波検査のあり方と,ISUOGのガイドラインとの整合性および今後のあり方について考察する.
【対象と方法】
2013年9月から2016年8月までの間に妊娠初期超音波検査を行った4414例のうち,胎児後頚部浮腫の指摘を受けて来院された258例を対象に,当院における検査結果及び経過を分析した.
【結果】
258例中,97例(37.6%)が,ISUOGが推奨する検査時期(11週から13週)よりも以前の時期での観察であり,そのほぼすべてにおいて,事前説明は行われていなかった.当院における検査で実際にNT肥厚と判断されたケースは,175例(67.8%)にとどまった.染色体検査は63例において行われ,数的あるいは構造異常の存在したケースは,25例であった.
一方,これらのケースのうち,前医では指摘を受けていなかった胎児奇形が認められたものが,18例存在した.その内訳は,骨系統疾患2例,頭蓋内構造異常4例,内臓逆位・錯位4例,腹壁形成不全・体幹部体表構造異常3例,泌尿生殖器系異常2例,心奇形の疑い5例であった.
内臓逆位・錯位は,NT肥厚のないケースも含めると6例が妊娠第1三半期超音波検査を経て発見されており,このうち1例は,検査時点では見逃されていた.見逃しが生じる原因として,超音波画像上での胎児の表示方法について,その方向性に一定の基準が存在していないことが考えられた.
【結論】
妊娠第1三半期における超音波検査は,本邦での現状とISUOGのガイドラインとの間で,その実施時期,内容,注意点などの点で,大きな開きがある.この開きを埋めるためには,妊婦の診療をおこなうシステムの見直しが必要であると考えられた.また,胎児を観察する上で,画像上にどう表示するかの標準化の必要性も検討されるべきである.