Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(心臓)・心機能

(S571)

胎児診断したBerry症候群の1例

prenatal diagnosis of Berry syndrome

岡山 潤, 尾本 暁子, 井上 万里子, 鈴木 義也, 尾崎 江都子, 中田 恵美里, 田中 宏一, 生水 真紀夫, 東 浩二

Jun OKAYAMA, Akiko OMOTO, Mariko INOUE, Yoshiya SUZUKI, Etsuko OZAKI, Emiri NAKADA, Hirokazu TANAKA, Makio SHOZU, Kouji HIGASHI

1千葉大学医学部附属病院周産期母性科, 2千葉県こども病院循環器内科

1DIVISION OF MATERNAL-FETAL MEDICINE, CHIBA UNIVERSITY HOSPITAL, 2Department of Cardiology, CHIBA CHILDREN`S HOSPITAL

キーワード :

【はじめに】
Berry症候群は大動脈肺動脈窓・右肺動脈上行大動脈起始・大動脈離断症を合併する先天性心疾患で,出生後の肺高血圧と動脈管閉鎖により早期の介入が必要な疾患である.一期的手術が奏功する報告があり,出生前診断は非常に重要である.症例自体が非常に少なく,出生前に診断される症例も少ない上,妊娠後期では胎児の姿勢や胎盤の位置により胎児心臓のスクリーニングは困難になることが多い.今回,胎児診断した症例を経験したため報告する.
【症例報告】
33歳,0経妊0経産.既往歴・家族歴なし.妊娠32週健診時に肺動脈の分枝がはっきり描出されず,three vessel view(以下,3VV)で上行大動脈が通常より細い印象があるとされた.その後の健診でも同様の所見のため妊娠36週6日に当科紹介となった.胎児は週数相応の発育で羊水量に異常なく,心臓以外に合併奇形を認めなかった.胸腺は描出された.36週での紹介のため,はっきりと描出ができなかった部分もあるが,以下,胎児心臓の所見を列記する.四腔像は左右バランスよくVSDなし,卵円孔の血流方向は逆方向(左右),軽度の三尖弁逆流があり,僧帽弁逆流はなし,CTARは28.1%であった.前医で指摘された3VVでは主肺動脈から左肺動脈の分枝は確認されたが,右肺動脈の分枝は認めなかった.動脈管は狭窄・蛇行等なく下行大動脈に連続していた.大動脈からの右肺動脈分岐部とほぼ同じ高さに9.7mmの大動脈肺動脈窓を認め,血流は左右であった.上行大動脈から大動脈峡部にかけては7-8mmで順行性血流であり,3本のneck vesselの分枝が確認できたが,下行大動脈との連続を認めず大動脈離断のtype Aと診断した.肺静脈は左右1本ずつの左房への還流が確認でき,その他静脈系の還流異常は認めなかった.以上よりBerry症候群と診断した.新生児科,小児循環器科と相談し計画分娩の方針とした.誘発分娩を行ったが,妊娠39週1日に分娩停止で帝王切開での分娩となった.児は3503g,Apgar score 8/9であった.生直後よりlipo-PGE1を開始し,日齢1に小児心臓外科併設施設に児搬送した.超音波検査では,大動脈肺動脈窓は遠位欠損型で9.5mmの交通孔であった.CTRは57%であった.日齢2で呼吸回数が40-60回/分と多く,今後のhigh flowの増悪を懸念し利尿剤を開始した.日齢5で胸部X線上,肺血管陰影の増強と肺野透過性の低下を認め,CTRは64%,SpO2は上肢96-100%,下肢88-95%であった.利尿は良好であったが,窒素療法を開始し利尿剤を増量した.日齢8に大動脈肺動脈窓の分離と大動脈弓の再建術を行った.術後経過は良好で日齢45に退院し,現在外来経過観察中である.
【考察】
前医での評価を元に,稀少な疾患の胎児診断を適切に行うことができ,速やかな新生児治療への移行が可能であった.