長崎 澄人, 鷹野 真由実, 上山 怜, 中田 雅彦, 森田 峰人

Sumito NAGASAKI, Mayumi TAKANO, Rei UEYAMA, Masahiko NAKATA, Mineto MORITA

東邦大学医療センター大森病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【諸言】
胎児心臓は成人や小児に比較して小さく，心拍数が高く，また胎児が子宮内に存在するという環境上，測定に困難を極める場合も多く，心収縮能などの心機能の評価について出生後と比較して信頼できるパラメーターが少ないのが現状である．これまで超音波パルスドプラ法を用いた血流評価やMモード法によるfractional shortening（FS）による計測がなされてきたが，信頼性・再現性の両面で臨床評価に用いるには十分な測定法として確立されていない．超音波2Dトラッキング法は，Bモード画像において胎児心筋壁の任意の部位にregion of interest（ROI）を設定し，自動的に追尾する方法である．そのため，心室中隔や心室壁にROIを設定することで自動的にFSの算出が可能である．今回，新たに改良したアルゴリズムを用いて2Dトラッキング法によってFSの自動計測（AutoFS法）を行ったので計測する．
【方法】
妊娠16週0日から41週6日の妊娠期間に妊婦健診を受診した単体胎児を対象とした．明らかな胎児構造異常は除外した，異常が指摘されていない母体60例を対象とした．B-mode法で胎児心の4chamber viewを描出し，数秒間の動画を撮影した．次に心室を長軸方向に三等分し基部から1/3の心室壁および心室中隔の部位にin-to-inでROIを設定しトラッキングを行った．左室ないし右室と心室中隔の間で計測したものをそれぞれAuto FS（左）,AutoFS（右）とし，右室壁と左室壁との間でROIを設定したものをAuto FS（Combined）とした．使用する超音波診断装置は，Arietta70（日立製作所ヘルスケアビジネスユニット社）を使用した．尚，本研究は当施設の倫理員会の承認のもと，対象母体より書面によるインフォームド・コンセントを得て実施した．
【結果】
平成28年11月から12月の期間に受診した単体妊婦60症例において，左右のAutoFSおよび，AutoFS（Combined）の測定が可能であった．Pearsonの相関分析においてAutoFS（左）でr=-0.52,AutoFS（右）でr=-0.61であった．
【結論】
現段階では各心室のAutoFSは妊娠週数に負の相関を認める傾向を示していた．胎児の心収縮能の評価となるよう，今後さらに症例数を増やし検討を重ねたい．