Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(心臓)・心機能

(S569)

デュアルドプラ法および組織ドプラ法による胎児心機能測定の試み

Mesuarment of Fetal Cardiac Function using Dual Gate Doppler Method and Tissue Doppler Imaging

沖本 直輝, 多田 克彦, 塚原 紗耶, 矢野 肇子, 福井 花央, 萬 もえ, 山下 聡美, 政廣 聡子, 立石 洋子, 熊澤 一真

Naoki OKIMOTO, Katsuhiko TADA, Saya TSUKAHARA, Hatsuko YANO, Kao FUKUI, Moe YOROZU, Satomi YAMASHITA, Satoko MASAHIRO, Yoko TATEISHI, Kazumasa KUMAZAWA

独立行政法人国立病院機構岡山医療センター産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Okayama Medical Center

キーワード :

【緒言】
現在胎児心機能の評価には様々な指標が用いられており,胎児の病態に応じて心機能評価の指標を使い分けている.心機能評価の一つとしてTei index(もしくはmyocardial performance index:MPI)が用いられているが,これは心収縮能および拡張能を同時に評価可能であるとされており,胎児心機能評価においても有用であるとの報告は多く見られる.しかしながら,成人心機能評価で有用であるとされているMPIを胎児心機能評価として用いる際様々な計測上の問題点が存在する.成人のMPIの測定は安静時に計測され心拍数の変化はあまり影響を及ぼさないが,胎児の場合は胎動などで心拍数の変化が頻回に起こりなおかつ成人より心拍数が多いため,房室弁流入波形と動脈駆出波形を別心周期で計測した場合の測定値の信頼性が低下する.同一心周期で計測する方法として流入路と流出路の両方にまたがるようにsample gateを配置する方法があるが,ノイズが多い波形になりやすいことと,解剖学的位置関係から右室MPIをsingle gateで同一心周期で計測することはほぼ不可能である.
近年超音波測定機器の中にdual gate Doppler(DD)が搭載されたものが登場し,様々な活用法が提案されている.DD法を用いてMPIが測定できれば流入路,流出路それぞれにsample gateを配置することが可能であり,右室でも同一心周期で測定可能であったり,より明瞭な波形の描出が可能となり測定精度の上昇が期待される.
また近年tissue Doppler imaging(TDI)の有用性が報告されており,胎児心筋TDIについても注目されはじめている.TDI法でMPIを測定できることやpulsed Dopplerと異なった観点からの心機能評価ができる可能性が諸家から報告されている.しかしながらTDI法によるMPI測定が有用であるかについては結論が出ておらず,検討が必要であると考えられる.
今回は我々はDD法およびTDI法を用いてMPI測定を行い測定値の相違や測定上の問題点,有用な点などを検討した.
【方法】
2016年4月から2016年12月の期間に同意が得られた妊婦を対象とし,胎児超音波検査の際にDD法およびTDI法によるMPI測定を行った,また心拡張能の指標とされているE/E’および心収縮能の指標とされている最大S’流速(S’max)も測定した.本研究は当院倫理委員会承認のもとで行った.
【結果】
研究期間内に計176計測(妊娠18週~39週)を行った.うち胎児発育不全や胎児形態異常例などを除いた正常例82計測の測定値の分布を確認した.DD法およびTDI法双方とも測定値の分布はほぼ同様の傾向を示し,一次回帰直線でも明らかな相違は見られなかった(LV: DD MPI=0.387+0.0029×GA, TDI MPI=0.351+0.0043GA/ RV: DD MPI=0.307+0.006×GA, TDI MPI=0.463+0.0007×GA;GA=妊娠週数)が右室DD法は胎位の関係から測定不能例が多かった(33計測のみ検討可能).
E/E’は妊娠週数に伴い漸減し,またS’maxは妊娠週数に伴い漸増しており諸家の報告同様の分布を示した.
【考察】
DD法およびTDI法でのMPI測定を行ったが測定値の明らかな相違は見られなかった.測定精度については本検討では明らかにはできなかったが,右室DDは胎位の関係などから測定困難例も多く見られたがTDI法では容易に測定可能であることがわかり,TDI法によるMPI測定は十分臨床的に導入可能であると考えられた.
ただ両計測法の測定値の相違は測定誤差に起因するものか,心筋と血流といった異なる対象を測定していることに起因しているのかは不明であり,今後のさらなる検討を要すると考えられた.