Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
子宮内異常血流

(S568)

流産後遺残と子宮内仮性動脈瘤を超音波検査で鑑別し得た2例

Two cases that was able to diagnose rest after abortion and uterine artery pseudoaneurysm by ultrasonography

福地 弘子

Hiroko FUKUCHI

水戸赤十字病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Mito Red Cross Hospital

キーワード :

子宮内仮性動脈瘤の原因は動脈の機械的・物理的損傷だけでなく,自然分娩や自然流産後にも起こり得るとされている.動脈瘤の破裂は時に致死的大量出血を来たすために,その診断と対応が重要である.
今回,流産手術後と自然流産後の子宮内遺残掻把依頼症例で,両者とも遺残を疑い再掻把する術前の超音波検査で仮性動脈瘤と診断し,保存的に管理し得た症例を経験したので文献的考察も含め報告する.
【症例1】
35歳2経妊2経産(2回帝王切開術),前医で稽留流産8週の診断で子宮内容除去術を施行.術後1か月間続く不正出血,血中hCG200 mIU/ml程度のため子宮内容遺残の再掻把を目的にて前医から紹介された.初診時,超音波で子宮内に2cm大の遺残様腫瘤と血流を認め,MRI検査の結果は絨毛遺残であったために再掻把とした.術前に行った経腟超音波カラードップラー法にて子宮内腔一部に無エコー部と血流を伴う高輝度腫瘤を認めたために子宮内仮性動脈瘤と診断し,掻把術を中止,保存的に観察をした.出血も徐々に止まり,術後5か月後には血流と遺残様腫瘤は消失した.
【症例2】
38歳4経妊1経産3自然流産(流産処置なし)前医にて胎嚢確認後出血し完全流産の診断であった.病理組織で絨毛組織を認めた.流産後1か月の診察で子宮内にhyper vascularを認めた.経過観察をしていたところ大出血し当院へ紹介受診となった.初診時出血は少量であったが,経腟超音波法で,子宮内に3cm大の血流豊富な腫瘤を認めた.出血は少量であった.hCG8.2mIU/ml,MRI検査で流産組織遺残の結果であった.子宮内容除去術前の超音波カラードップラー法で,子宮内腔に一部無エコー部で同部位に血流様高輝度腫瘤を認めたために,子宮内仮性動脈瘤と診断し,掻把術を中止し,保存的に経過を診たところ,徐々に出血が止まり,術後4か月後には血流と遺残様腫瘤は消失した.
2症例とも流産後の子宮内容遺残をMRI検査で疑われた症例であった.術前の超音波検査で子宮内仮性動脈瘤を診断していなければ子宮内容除去術を行い大出血を来していた可能性があった.子宮内仮性動脈瘤の治療法は出血時の子宮動脈塞栓術が第一選択となり,有効な止血効果が得られる.塞栓術後の妊孕性や月経の再開に関する安全性は確立されていない.子宮内仮性動脈瘤が破裂すると大量出血にて緊急を要するために,掻把の有無に関わらず,産後や流産後の出血には子宮内仮性動脈瘤を必ず鑑別診断としておき,Bモードがけでなく,カラードップラーの併用が重要と思われた.