Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
子宮内異常血流

(S567)

HDliveFlowを用いた子宮動静脈奇形の観察

HDliveFlow color Doppler for the diagnosis of arteriovenous malformation of the uterus

天雲 千晶, ABOELLAIL Mohamed, 山本 健太, 石橋 恵, 花岡 有為子, 金西 賢治, 田中 宏和, 秦 利之

Chiaki TENKUMO, Mohamed ABOELLAIL, Kenta YAMAMOTO, Megumi ISHIBASHI, Uiko HANAOKA, Kenji KANENISHI, Hirokazu TANAKA, Toshiyuki HATA

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University Graduate School of Medicine

キーワード :

【緒言】
子宮動静脈奇形(uterine arteriovenous malformation, UAVM)は子宮に異常な動静脈吻合があり,子宮内操作時や月経時に大量性器出血をきたす稀な疾患である.先天性のものもあるが,多くは子宮内掻爬術後や妊娠,絨毛性疾患,感染などを契機に形成される後天的なものであり,子宮内膜の物理的損傷が原因として考えられている.診断には超音波検査,造影CT,MRA,血管造影などが行われるが,中でも超音波ドプラ法が簡便で低侵襲でありまず行われるべき検査であろう.今回我々は,超音波の中でもHDliveFlowを用いてUAVMと思われる症例について観察を行ったので報告する.
【症例1】
31歳,0経妊0経産婦.前医より胎児水腫精査目的に妊娠11週で紹介となるが妊娠継続希望なく,妊娠14週時に近医で中期中絶を行った.流産後1ヶ月で大量性器出血を認めたため当院へ救急搬送となった.2次元超音波カラードプラ法で子宮内腔へ向かう拍動する動脈性の血流を認めた.パワードプラ法では鋸歯状の血流が観察され,最高血流速度は70.8cm/sだった.HDliveFlowを用いると拡張した血管が子宮内腔へ露出している様子が観察できた.UAVMを疑い血管造影検査を施行,続けて両側子宮動脈塞栓術(UAE)を行い,止血を得た.UAE後1ヶ月では子宮内腔への血流は消失していた.
【症例2】
28歳,1経妊1経産婦.経腟分娩後4週で大量性器出血を認め当院へ救急搬送された.2次元超音波断層法で子宮内に高輝度のmassを認め,カラードプラ法ではmassに向かう拍動する血流を認めた.パワードプラ法で鋸歯状の血流が観察され,最高血流速度は154.9cm/sだった.HDliveFlowを用いるとドプラ法で認めた血流と同部位に蛇行した怒張血管を認めた.圧迫目的に子宮内にバルンを挿入したところ止血が得られたため保存的に経過観察した.その後再出血なく経過し,産後7週には子宮内腔の拍動する血流は認めず,産後12週で月経が再来した.
【考察】
従来の2次元超音波ではパルスドプラ法を用いて血流速度を測定したり,AVMへの流入血路を同定することが可能であり,UAVMの診断においては低侵襲で簡便であるため広く行われている.これにHDliveFlowを加えて用いるとAVMの立体的なイメージ構築が可能となり視覚的に把握しやすくなるため,AVM診断における強力なツールになると考えられる.