中尾 一貴, 上野 琢史, 竹田 健彦, 田野 翔, 宇野 枢, 眞山 学徳, 鵜飼 真由, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Kazutaka NAKAO, Takuji UENO, Takehiko TAKEDA, Sho TANO, Kaname UNO, Michinori MAYAMA, Mayu UKAI, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, TOYOTA Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
子宮動静脈奇形は動静脈間が直接吻合し，毛細血管が欠如している血管奇形で時に致死的な出血を引き起こすことがある1）．子宮動静脈奇形には先天性と後天性があり，後天性の原因として帝王切開，子宮内容清掃術，絨毛性腫瘍が指摘されている．診断には元来，血管造影が標準的な検査法とされてきたが，超音波断層法による診断も報告されるようになっている．今回我々は骨盤内に広範囲に血流が認められた巨大子宮動静脈奇形の症例を経験したので報告する．
【症例】
45歳女性，4経妊2経産．侵入奇胎，2回の帝王切開の既往あり．35歳頃より過多月経，過長月経，不正出血があったが，経過観察していた．45歳時に不正出血が持続し，当院へ紹介となった．初診時の経腟超音波断層法では子宮筋層内，膀胱壁に管状低輝度エコー像が多発性に認められ，カラードプラ法でモザイク状の血流パターンを呈していた．子宮動静脈奇形の診断でGnRH agonistによる偽閉経療法を開始したところ，1ヵ月後には止血したが，子宮筋層と膀胱壁の豊富な血流は改善しなかった．造影3D-CTでは卵巣静脈から内腸骨静脈に及ぶ広範囲な骨盤内の血管怒張が認められた．巨大子宮動静脈奇形と診断し，保存的治療は困難と考え，子宮動脈塞栓術を施行した．
【結論】
子宮動静脈奇形は性器出血，過多月経などの原因となる疾患であり，超音波断層法で管状低輝度エコー像にカラードプラ法でモザイク状の血流パターンが認められることが特徴的である2）．カラードプラ法を用いた経腟超音波断層法は低侵襲で，子宮動静脈奇形の診断に有用であった．
【文献】
1）Ichikawa, et al. Ultrasound diagnosis of uterine arteriovenous fistula associated with placental site trophoblastic tumor. Ultrasound Obstet Gynecol 2003;21:6068.
2）Timmerman D, et al. Color Doppler imaging is a valuable tool for the diagnosis and management of uterine vascular malformations Ultrasound Obstet Gynecol 2003; 21: 570577.