Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
産婦人科腫瘍

(S566)

腹部超音波検査は卵巣癌の小網と肝門部播種病変の検出に有用である

Preoperative abdominal ultrasonography is useful for the detection of lesser omental metastasis and portal metastasis

新井 聡子, 石井 久美子, 松岡 歩, 錦見 恭子, 楯 真一, 尾本 暁子, 生水 真紀夫

Satoko ARAI, Kumiko ISHII, Ayumu MATSUOKA, Kyouko NISHIKIMI, Shinichi TATE, Akiko OMOTO, Makio SHOZU

千葉大学医学部附属病院婦人科・周産期母性科

Department of Gynecology and Obstetrics, Chiba University Hospital

キーワード :

【緒言】
卵巣癌では術後の残存腫瘍の有無が予後と相関するため,complete surgeryを目指した最大限の腫瘍減量術を目指すべきである.当科ではこれまで造影CT(以下CT)で播種病変を評価し,初回腫瘍減量術(以下PDS)の決定を行ってきた.しかし,開腹後に想定以上の播種や癒着が判明し,試験開腹に変更になることがあった.そこで今回われわれは,PDS可否の判断に重要な,小網と肝門部播種病変を対象に,従来のCTによる評価に超音波検査(以下US)を併用することで診断精度が高まるか,前向きに検討した.
【対象・方法】
対象は,2014年10月から2016年3月までに卵巣癌を疑い当科で手術を施行した62症例.評価項目を小網と肝門部播種病変の有無とした.まず,術前1ヶ月以内にCTを撮影し,読影所見をCT単独の結果とした.次いで,CTを参照後にUSを施行し,同部位の播種病変の有無について検索を行った.USの陽性所見を,小網では肥厚・形状不正・結節があるもの,肝門部では肝円索・胆嚢周囲に結節があるものとした.その結果をUS併用とし,CTとUSの結果が異なる場合はUSの所見を優先した.これらCT単独とUS併用の結果を術中所見と比較し,それぞれの感度,特異度,正診率を検討した.CTは放射線科医と婦人科医でそれぞれ読影を行い,USは超音波検査士2名で評価した.
【結果】
小網では,US併用により感度は高まり(CT単独:8%,US併用:70%),特異度に有意差がなく(CT単独:100%,US併用:92%),正診率が高まった(CT単独:64%,US併用:83%).肝門部でも感度は高まり(CT単独:5%,US併用:75%),特異度に差はなく(CT単独:100%,US併用:100%),正診率が高まった(CT単独:63%,US併用:90%).
【考察】
USの併用により,CTでは指摘できなかった病変の検出が可能となった.これは,CTではスライス幅以下の病変の指摘が困難であり,また,USではリアルタイムに詳細な観察ができるためと考える.PDS時に小網や肝門部に播種がある場合は,胃や肝の部分切除が考慮される.その際,他科の応援が必要な場合や,完全切除が困難な場合もある.PDSによる侵襲性が高い症例では術前化学療法が選択されるが,USの併用により,PDSを行うべきか,化学療法を先行すべきか,より正確な評価を行うことができると考える.
【結語】
小網と肝門部播種病変について,CTにUSを併用することで診断精度を高めることができた.