Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
分娩

(S563)

超音波断層法が診断に有用であった分娩時子宮破裂の1例

A case report of uterine rupture effectively diagnosed by transabdominal ultrasonography

上野 琢史, 中尾 一貴, 竹田 健彦, 田野 翔, 宇野 枢, 眞山 学徳, 鵜飼 真由, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Takuji UENO, Kazutaka NAKAO, Takehiko TAKEDA, Sho TANO, Kaname UNO, Michinori MAYAMA, Mayu UKAI, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院周産期母子医療センター産科

Department of Obstetrics, Perinatal Medical Center, TOYOTA Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
子宮破裂の多くは分娩時に発症し,全分娩の約0.06%で起こるとされる.そのほとんどは帝王切開術や子宮筋腫核出術の既往がある患者に生じるが,13%は子宮手術の既往がない患者に生じるとされている1).また,子宮破裂は分娩後にも起こる可能性があり,子宮収縮が良好であるにもかかわらず,出血が持続する場合には,考慮するべき疾患である.発症時には,多量の出血を伴い,母体と胎児両者にとって致死的になるため,母体および胎児の状態に応じて急遂分娩を行い,分娩後は速やかに子宮修復術または子宮摘出術を行う必要がある.今回我々は吸引分娩後に出血の持続を認め,経腹超音波断層法にて子宮破裂と診断した1例を経験したので報告する.
【症例】
34歳,2経妊1経産.人工妊娠中絶の既往あり.前医で微弱陣痛のためクリステレル併用の吸引分娩後に,約3,000 mLの出血を認め,止血困難のため当院に緊急産褥搬送となった.来院時は意識清明,血圧96/78 mmHg,脈拍147 bpm,Hb 4.5 g/dLでShock Indexは1.5であった.子宮収縮は来院時より良好で,頸管裂傷を認めず,子宮内には胎盤の遺残を認めなかった.バクリバルーンを挿入し,輸血を行いながら保存的にICU管理としたが,性器出血が持続した.経腹超音波断層法で,腹腔内の液体貯溜と,子宮頸部左側の筋層断裂像を認め子宮破裂と診断し,緊急開腹術を施行した.開腹すると,腹腔内から左後腹膜に広がる血腫と子宮頸部左側に2 cmの破裂部位を認め,子宮破裂と診断した.修復は困難と判断し,単純子宮全摘出術を施行した.術後経過は良好で,術後3日で前医へ転院となった.
【結語】
子宮破裂は,産後に出血が持続した際には,子宮手術の既往のない患者でも,弛緩出血や頸管裂傷と共に鑑別に上げる必要があり,可及的速やかに診断する必要がある.経腹超音波断層法は迅速かつ低侵襲に子宮壁の断裂像を描出できるため,子宮破裂の診断に有用であった.
1)Zwart JJ, Richters JM, Ory F, et al. Uterine rupture in The Netherlands: a nationwide population-based cohort study. BJOG 2009; 116:1069.