Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
分娩

(S562)

周産期における女性骨盤底構造の変化 3D probeを用いた経会陰超音波による検討

The evaluation of female pelvic floor’s structure at the perinatal period by perineal 3D ultrasound

西林 学

Manabu NISHIBAYASHI

地域医療振興協会練馬光が丘病院産婦人科

OB/GY, JADECOM Nerima-Hikarigaoka Hosp

キーワード :

経腟分娩に伴い骨盤底の組織に物理的な損傷が生じ,産後に様々な症状を生じる.具体的には,経腟分娩による恥骨頚部筋膜,直腸腟中隔,恥骨直腸筋などの損傷により骨盤臓器脱(子宮脱,膀胱瘤,直腸瘤など)や腹圧性尿失禁が生じ,さらに肛門括約筋損傷により便失禁やガス失禁が生じることが知られている.
経会陰超音波により女性骨盤底を精査する方法は1970年代より行われ,当初は2D probeによる評価が行われていたが,近年は3D probeを用いた方法が世界的に行われるようになっている.
当院では,2014年5月より当院で分娩予定の妊婦を対象に経腟3D probeを用いて骨盤底の観察を行っている.具体的には,妊娠24週・34週・分娩後退院診察時・分娩後1ヶ月,の計4回,経腟3D probeを用いた経会陰超音波を行い,volume dataを保存した上で,後日,恥骨直腸筋,肛門括約筋の損傷の有無の確認し,また恥骨と恥骨直腸筋で囲まれた部分(levator hiatus area)の面積を計測し,さらに尿失禁・便失禁についてのアンケート調査を施行している.
抄録作成時点で332例の解析がなされている.現時点での解析では,1)経腟分娩を経験した経産婦は,初産婦と比べ分娩前のlevator hiatus areaが有意に広かった 2)初産婦の場合,分娩前と比較して分娩後のlevator hiatus areaは増加し,出産後1ヶ月の時点では,経産婦と優位差がないほど拡大していた 3)分娩前,1経産婦で約50%,2経産以上では約66%に恥骨直腸筋損傷を認め,経腟分娩後には経産回数に伴わず約80%に恥骨直腸筋損傷を認めた4)経産婦では妊娠中,分娩後を通じて,腹圧性尿失禁の合併率が初産婦より有意に高かった.5)経産婦では,妊娠34週において恥骨直腸筋損傷を認めた場合には,損傷を認めない場合と比較して有意に分娩第二期が短かった.
以上より,分娩により女性骨盤底組織に物理的な損傷が生じることが示され,これらの損傷が腹圧性尿失禁の発症や分娩時間に関与していることが示唆された.