Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
分娩

(S560)

経会陰超音波による産道内での児頭の挙動についての検討

Analysis of fetal head progression in the birth canal with intrapartum translabial ultrasound

坂巻 健, 海野 沙織, 市川 麻祐子, 樋口 紗恵子, 金高 友妃子, 手塚 真紀, 後藤 美希, 小林 浩一

Ken SAKAMAKI, Saori UNNO, Mayuko ICHIKAWA, Saeko HIGUCHI, Yukiko KANETAKA, Maki TEZUKA, Miki GOTO, Koichi KOBAYASHI

1JCHO 東京山手メディカルセンター産婦人科, 2広尾まきレディスクリニック産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, JCHO Tokyo Yamate Medical Center, 2Obstetrics and Gynecology, Hiroo Maki Ladies Clinic

キーワード :

【目的】
当院では,産婦が分娩室に入室後,原則として全例に経会陰超音波を行っている.保存された3Dデータは分娩後にSonoVCAD(Sonography based Volume Computer Aided Diagnosis)Laborを用いて解析し,児頭下降度の指標であるProgression Angle(PA),Progression Distance(PD),それぞれ第2,第3回旋の指標であるMidline Angle(MA),Head Direction(HD)を計測している.これらのパラメーターは,産道の中で児頭がどの方向に向かってどれくらい下降し,第2回旋がどの程度進捗しているかを表しており,経時的に計測すれば分娩の進行状況を把握できる,いわば,超音波パルトグラムともいうべきものが描けるのではないかと考えている.そして,この超音波パルトグラムが分娩経過や分娩様式の予測に利用できるのではないかという仮説を立てている.そこで今回の検討では,産道を通過する際の児頭の挙動に一定の傾向があるのかを確認すること,また,あるとすれば分娩の経過や分娩様式によりそれが異なるのかを検証することを目的とした.
【対象と方法】
2012年1月から2015年12月までの間に当院で分娩した産婦のうち,分娩室に入室後に経会陰超音波を行い,3Dデータが保存されていた875例を対象とした.まず,初産で自然陣発し,微弱陣痛とならず,2期遷延もなく経腟分娩となった群を「狭義の初産正常経腟分娩群」とし,PA,HD,MAの分布を検討した.次に,これを対照として,経産婦で同様に定義した「狭義の経産正常経腟分娩群」や初産で誘発・促進を行った群,2期遷延を認めた群など分娩経過の異なる群と比較した.また,分娩様式が異なるものとして,初産で鉗子・吸引分娩になった群とも同様の比較を行った.
【結果】
回旋異常を認めた25例を除いた850例のうち,狭義の初産正常経腟分娩群は248例で,PA-HD,PA-MA,HD-MAのいずれも直線的な相関を認めたが,PA-HDが最もよく相関していた(R2=0.47).狭義の経産正常経腟分娩群は257例で,同様にPA-HDでよい相関(R2=0.58)がみられたが,対照と分布の差はみられず,また,分娩経過の異なる群との比較でも差はみられなかった.鉗子・吸引分娩になった群と比較すると,HDは鉗子・吸引群で有意に小さい値となったが,児頭の下降度を合わせるため,HD/PAの値で比較すると有意な差はみられなかった.
【考察】
PAとHDには直線的な相関があり,児頭が下降するに従い児頭は徐々に出口部の方向を向く様子が確認された.しかし,第2回旋は,児頭が比較的高い位置でも終了しているもの,下降していても終了していないものなど,症例によるばらつきが多いことが確認された.これらは初産,経産,分娩の経過によらず同様の分布を示すため,分娩進行の速度や陣痛の強弱は産道内の児頭の挙動に影響を与えないと考えられた.また,PA-HDの関係において,狭義の初産正常経腟分娩群と鉗子・吸引群の分布に差がみられなかったことから,分娩室での単回計測では,その後の分娩様式を予測できないことが示唆された.今後は経時的に計測された症例の解析が必要であると考えられた.