Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・前置血管

(S558)

癒着胎盤の補助診断として分娩後の胎盤血流の有無を観察した6例

Six cases that observed having placenta blood flow or not after the delivery as a supporting diagnosis of the placenta accreta

生井 重成, 梁 栄治, 長屋 陽平, 瀬戸 理玄, 森田 政義, 鎌田 英男, 松本 泰弘, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Shigenari NAMAI, Eiji RYO, Yohei NAGAYA, Michiharu SETO, Masayoshi MORITA, Hideo KAMATA, Yasuhiro MATSUMOTO, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学産婦人科

obstetrics and gynecology, Teikyo University

キーワード :

【緒言】
癒着胎盤を分娩前に診断することは困難である.児の娩出後に胎盤に血流を認めれば,その血流は母体側からのみ供給されており,胎盤が子宮から剥がれていないことを意味する.したがって分娩後の胎盤血流の有無を観察することは癒着胎盤の補助診断となる可能性がある.我々は癒着胎盤の可能性が考えられた6症例に対し,児娩出後の胎盤血流の有無を観察したので報告する.
【症例】
【症例1】
36歳 3回経妊3回経産,3回とも帝王切開,超音波断層法・MRIにて全前置胎盤と診断,癒着胎盤を疑い34週3日ハイブリット手術室にて帝王切開施行.児娩出から15分経過しても胎盤剥離徴候を認めなかった.術中,子宮に超音波プローブを直接接触させ,カラードプラー法にて観察.胎盤内に動静脈の血流を認めた.両側内腸骨動脈造影でも胎盤濃染像あり,選択的子宮動脈塞栓術を施行した.子宮と膀胱間に怒張した血管を豊富に認め子宮摘出は困難と判断,止血を確認し胎盤を温存したまま閉腹.1.5か月後に怒張した血管の退縮を認め子宮摘出を施行した.病理学的にも癒着胎盤を認めた.
【症例2】
42歳1回経妊0回経産,子宮筋腫核出術後,体外受精妊娠.超音波断層検査・MRIで辺縁前置胎盤,癒着胎盤が疑われた.37週6日ハイブリット手術室で選択的帝王切開施行.児娩出後15分経過しても胎盤剥離徴候を認めなかった.術中にカラードプラー法にて観察.胎盤全体に血流を認めた.両側内腸骨動脈造影でも胎盤濃染像あり,選択的子宮動脈塞栓術を施行,止血を確認し胎盤温存したまま閉腹.産褥6日目に出血を認めたため,手術室にて経腟的に胎盤剥離術を行った.臨床的に癒着胎盤と判断した.
【症例3】
36歳0回経妊,子宮筋腫核出術・子宮内膜症性嚢胞摘出術後,体外受精妊娠.前置胎盤の診断であった.超音波検査・MRIでは癒着胎盤を疑う所見は認めなかったがハイリスク症例と考えハイブリット手術室にて37週0日選択的帝王切開施行.児娩出後に超音波で胎盤血流を確認したところ胎盤血流を認めず,用手剥離したところ胎盤は容易に娩出された.
【症例4】
43歳0回経妊,子宮筋腫核出術後,タイミング妊娠.超音波検査・MRIで筋腫核出創部への癒着胎盤を疑う所見を認めた.38週0日選択的帝王切開施行.児娩出後,胎盤血流を確認したが,胎盤内に血流を認めなかった.胎盤は自然に容易に娩出された.
【症例5】
39歳5回経妊0回経産,体外受精妊娠.超音波検査・MRIで後壁の辺縁前置胎盤であり,癒着胎盤を疑う所見を認めた.36週1日帝王切開施行.児娩出後,胎盤の血流は消失せず,出血量も増加したため子宮摘出に至った.病理学的にも癒着胎盤の診断であった.
【症例6】
23歳1回経妊1回経産,妊婦健診未受診.推定40週,自宅で経腟分娩となり救急要請.胎盤は子宮内に遺残した状態で搬送された.児娩出から約50分経過するも胎盤娩出がなく用手剥離をしたが,娩出不能であった.超音波カラードプラー検査で胎盤内に血流を認め,続いて行った造影CT検査で胎盤血流を認めた.子宮動脈塞栓術を検討中,児娩出から約2時間後に胎盤は自然娩出した.出血量は計1,280gであった.
【考察】
児娩出後に胎盤に血流を認めた症例は6例中4例あった.このうち2例は病理学的に癒着胎盤が確認され,1例は臨床的に癒着胎盤と判断された.残りの1例では胎盤は自然に娩出されたが児娩出から2時間を要し出血多量であった.胎盤に血流を認めなかった2例はともに胎盤の娩出は容易であった.分娩後の胎盤血流の有無を観察することは癒着胎盤の補助診断に寄与すると考えられた.