Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(腹部・外性器)・発育

(S555)

妊娠後期に胎児腹腔内嚢胞として発見された神経芽細胞腫の一例

Prenatal diagnosis of cystic adrenal neuroblastoma: A Case Report

篠原 諭史, 須波 玲, 笠井 真祐子, 内田 雄三

Satoshi SHINOHARA, Rei SUNAMI, Mayuko KASAI, Yuzo UCHIDA

山梨県立中央病院母性科

Department of Obstetrics and Gynecology, YAMANASHI PREFECTURAL CENTRAL HOSPITAL

キーワード :

【緒言】
神経芽細胞腫は小児期悪性腫瘍として頻度が高く副腎に好発する.約半数が嚢胞性病変を呈することから出生前には胎児腹腔内嚢胞として発見される場合が多い.今回我々は妊娠36週の胎児超音波検査で右上腹部に血流の豊富な腹腔内嚢胞を認め,出生後に神経芽細胞腫と診断された症例を経験したので報告する.
【症例】
20歳,1回経妊1回経産.妊娠36週時に前医にて胎児腹腔内嚢胞を指摘され当院に紹介となった.初診時の胎児超音波検査で右腎上極に接して隔壁を有する44×38×32 mmの嚢胞性病変を認めた.超音波カラードップラー法では腎動脈から同腫瘤に分岐する栄養血管が描出された.胎児MRIではT1,T2強調画像ともに比較的低信号であり副腎出血は否定的でありneuroblastomaを含む腫瘍性病変の可能性が高いと考えられた.胎児発育は週数相当であり胎児貧血を示唆する血流異常は認めなかった.その後,嚢胞性病変が増大し,胎児中大脳動脈最高血流速度が上昇(86cm/sec:1.39Mom)してきたことから嚢胞内出血に伴う胎児貧血が疑われた.妊娠39週6日に分娩誘発にて3500g,Apgar score 8/9点の男児を正常経腟分娩した.臍帯血ではHb 17.0g/dl,Ht 53.8%,Plt 29.2×104/μlで貧血は認めなかったが,NSE 44.2ng/ml,VMA 8.4 mg/l,HVA 7.4 mg/lと高値で神経芽細胞腫が疑われた.生後16日にMIBGシンチグラフィーで嚢胞周囲の菲薄化部分に集積像を認め,腫瘍生検による病理組織検査の結果,神経芽細胞腫の診断となった.臨床進行期はstage IIIで,腫瘍が増大してきたことから化学療法(Vincristine,Cyclophosphamide)を2クール施行後,右副腎を摘出し,生後13か月の時点で再発は認めていない.
【結語】
胎児の上腹部に血流の豊富な嚢胞性病変を認めた際には神経芽細胞腫の可能性を考慮する必要がある.出生前診断された神経芽細胞腫では自然退縮する症例もあるが,本症例のように胎児期から増大傾向を示し生後早期に集約的治療が必要となる症例もあるから,本疾患が疑われた場合には,出生前からの高次医療施設における周産期管理が重要と考えられる.