Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(気道・肺)

(S554)

胎児期の肺動脈血流波形評価による先天性横隔膜ヘルニア予後予測

Association between intrapulmonary arterial Doppler and prognosis in fetuses with congenital diaphragmatic hernia

金川 武司, 臼井 規朗, 味村 和哉, 笹原 淳, 遠藤 誠之, 石井 桂介, 木村 正, 光田 信明

Takeshi KANAGAWA, Noriaki USUI, Kazuya MIMURA, Jun SASAHARA, Masayuki ENDO, Keisuke ISHII, Tadashi KIMURA, Nobuaki MITUDA

1大阪府立母子保健総合医療センター産科, 2大阪大学産科婦人科

1Department of Maternal-Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health, 2Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は,肺低形成や肺高血圧により早期新生児期に死亡しうる.よって,胎児期に肺低形成や肺高血圧の程度を予測することは,胎児治療の適応や新生児治療の方針を検討するために重要になってくる.これらの予測の指標として,主にobserved/expected lung-to-head ratio(O/E LHR)や肺/胸郭面積比(LTR)が検討されているが,肺動脈血流波形はあまり検討されていない.そこで,胎児肺動脈血流で計測されるacceleration time/ejection time比(AT/ET比)によりCDHの予後を予測できるか検討した.
【対象と方法】
2007年~2016年に妊娠20週から36週までに胎児診断され,2施設で管理した孤発性CDH児を対象とした.34週未満の早産,症候性・その他の形態異常を有するCDH,胎児治療を行ったCDHは除外した.また,2施設間で行われた周産期治療が同じ方針で行われたCDH児に限定した.
方法は後方視的コホート研究で,健側肺動脈血流波形から右心室収縮早期血流波形におけるonsetからpeakまでの時間(AT)および右心系の駆出時間(ET)より得られるAT/ET比の計測値,同時に計測されたO/E LHRとLTRおよび母児の周産期情報および転帰を診療録より抽出した.AT/ET比は,計測されたうち,最も早い時期に計測されたものを採用した.また,予後良好とは発達遅滞を認めず,在宅酸素を要しない生存退院とし,それ以外の生存退院(有病生存)や死亡を予後不良とした.まず,AT/ET比に関して,ROCカーブより予後不良が予測されるカットオフ値・感度・特異度を算出した.そして,同時に計測されたO/E LHR,LTRについてもカットオフ値を算出し,それぞれの指標の検査精度についてAUC・感度・特異度を用いて比較した.
【結果と考察】
対象となった孤発性CDHは37児で,予後良好31児,予後不良6児(有病生存5児,死亡1児)であった.予後不良を予測するAT/ET比のカットオフ値は0.130(AUC 1.00)で感度・特異度はともに100%であった.また,O/E LHRおよびLTRのカットオフ値はそれぞれ,40.2%(AUC 0.92; 95%信頼区間:0.77 to 0.97)および0.09(AUC 0.94; 95%信頼区間:0.81 to 098)で,感度・特異度はそれぞれ,83%・87%,83%・90%あった.AT/ET比のAUCとO/E LHRおよびLTRのそれとの差は,それぞれで,0.081(95%信頼区間:-0.009 to 0.170; P=0.077)および0.057(95%信頼区間:-0.016 to 0.129; P=0.127)で有意な差ではなかった.
【結論】
孤発性CDH児のAT/ET比が0.130未満の場合,予後不良であることを予測できた.また,AT/ET比は従来の指標と比較しても遜色のない有用な指標であることが示唆された.