Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(気道・肺)

(S553)

胎児診断された頚部腫瘤症例の周産期予後

Perinatal outcome of cases with fetal cervical tumor like mass

川口 晴菜, 石井 桂介, 金井 麻子, 山本 亮, 笹原 淳, 金川 武司, 光田 信明

Haruna KAWAGUCHI, Keisuke ISHII, Asako KANAI, Ryo YAMAMOTO, Jun SASAHARA, Takeshi KANAGAWA, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Obstetrics, Department of Maternal Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
胎児診断された頸部腫瘤症例の周産期予後を明らかにする.
【方法】
対象は,2005年から2016年までに,当院にて妊娠22週以降分娩となった胎児頸部腫瘤の症例である.後頚部浮腫単独の症例は除外した.診療録より胎児頸部腫瘤における妊娠分娩経過および児の出生後診断と治療について検討した.
【結果】
対象25例の内訳は,リンパ管腫9例,奇形腫2例,血管腫1例,筋繊維腫1例,甲状腺腫7例,梨状窩瘻1例,側頸嚢胞4例であった.診断週数は中央値28(18-38)週であった.全例超音波検査によって頚部腫瘤の診断が可能であり,16例でMRIを追加し腫瘤の形態,部位,気管や食道との関係を検索した.リンパ管腫を疑っていたが梨状窩瘻であった1例,梨状窩瘻を疑っていたが側頸嚢胞であった2例の計3例で生後に診断が修正された.羊水過多を7例(奇形腫2例,リンパ管腫1例,側頸嚢胞1例,甲状腺機能低下による甲状腺腫3例)で認めた.子宮収縮抑制を要する切迫早産を2例に認めた.5例に胎児治療を行ったが,甲状腺機能低下症による甲状腺腫に対する甲状腺ホルモン羊水腔投与2例,甲状腺機能亢進症による甲状腺腫に対する経母体抗甲状腺薬投与2例,側頸嚢胞の穿刺1例であり,いずれも腫瘤は縮小した.またex utero intrapartum treatment(EXIT)を2例に施行した.1例は前頚部に存在する長径10cmの奇形腫によって気管の走行が不明であった症例であり,EXITにて気道確保できないまま胎児徐脈となり,蘇生できず新生児死亡となった.もう1例は,前頚部の長径14cmのリンパ管腫の症例で,EXITにて気管内挿管された.帝王切開は7例であり,EXIT2例および血管腫1例,奇形腫1例が腫瘤のための帝王切開で,他の3例は産科的適応による緊急帝王切開であった.分娩週数の中央値は38(33-41)週で,出生体重は中央値2856g(1836~3802)であった.奇形腫の1例は常位胎盤早期剥離で母体への輸血を要した.新生児死亡は奇形種の2例であり,いずれも出生当日であった.出生後気管内挿管や気管切開等の気道確保を必要としたのは,新生児死亡の奇形腫2例を除き,梨状窩瘻1例,リンパ管腫1例であった.リンパ管腫9例全例で硬化療法を要した.側頸嚢胞2例,血管腫1例で摘出術を要した.甲状腺腫全症例で,胎児治療もしくは母体の薬剤投与量変更によって出生時には腫瘤は縮小していたが,3例で一時的な抗甲状腺薬投与,2例で甲状腺ホルモンの補充を要した.
【考察】
胎児頸部腫瘤の25症例のうち,出生前画像診断によって頚部腫瘤の診断は可能であったが,3例で診断が修正となった.腫瘤のため経腟分娩困難と判断されたのは4例で,18例(72%)で経腟分娩可能であった.甲状腺腫では,胎児治療や母体への薬物療法によって腫瘤の縮小を得ることができた.奇形腫の2例は気道確保ができず新生児死亡となったが,その他は生命予後良好であった.