Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(気道・肺)

(S552)

Ex utero intrapartum treatment(EXIT)を行った3症例

Ex utero intrapartum treatment in the management of fetal airway compromise

金井 麻子, 川口 晴菜, 笹原 淳, 山本 亮, 金川 武司, 石井 桂介, 光田 信明

Asako KANAI, Haruna KAWAGUCHI, Jun SASAHARA, Ryo YAMAMOTO, Takeshi KANAGAWA, Keisuke ISHII, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Department of Maternal-Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
出生後の気道確保が困難である予測される児に帝王切開中に胎盤循環を維持したまま気道確保を行うex utero intrapartum treatment(EXIT)を施行した3例の経過を報告する.
【症例1】
26歳,初産.妊娠27週に胎児MRIにて頸部奇形腫が疑われた.超音波検査にて胃泡の消失と羊水過多を認め,腫瘍による圧排に伴って気管の走行を確認できず気道確保は困難と予測した.妊娠31週より胎児水腫を合併し,以後胎児水腫の増悪を認めた.子宮収縮抑制困難となり妊娠33週に緊急帝王切開を施行した.手術時間は101分,出血量は1100ml,昇圧薬を要したが,輸血は行っていない.児の右上肢にSpO2モニターを装着した.軟性鏡下あるいは喉頭展開による直視下での気管内挿管を試みたが児の娩出が進み,胎児徐脈のためEXIT開始後29分で中止し,2458gの男児の娩出となった.喉頭展開で挿管できず換気困難であり,胸骨圧迫を開始したが心拍上昇を認めず蘇生を断念した.死亡時画像病理診断では腫瘍の圧排により気管は描出できなかった.
【症例2】
28歳,1経産.妊娠15週で胎児皮下浮腫を認めたが,羊水染色体検査にて正常核型であった.妊娠20週に胎児腹水が出現したが,原因は特定できなかった.妊娠27週の超音波検査にて,両側高輝度肺と気管の拡張を認めた.妊娠34週の胎児MRIにて,胎児の喉頭での先天性上気道閉鎖が疑われ,EXITの方針となった.妊娠37週に選択帝王切開を施行した.手術時間は74分,出血量は450mlで輸血は要さなかった.右上肢にSpO2モニターを装着した.喉頭展開,あるいは硬性鏡下での挿管を試みたが,声帯の閉鎖を認めEXIT開始後7分で気管切開に移行した.気管切開に難渋し,児の頸部を背屈させるために児の体位を取り直し,気管切開を行った.気切カヌラ挿入後にEXIT開始後43分の時点で,1868gの女児を娩出した.喉頭閉鎖および気管軟化症の出生後診断となった.
【症例3】
34歳,1経産.妊娠21週で胎児前頸部に多房性嚢胞性腫瘤を認め,胎児リンパ管腫を疑った.リンパ管腫は舌下および下顎から前縦隔にかけての浸潤し,口腔内腫瘍により舌は突出していた.嚥下運動,胃泡を認めたが,一時的に羊水過多を認めた.妊娠35週の胎児MRIでは,咽頭腔から下の気道は確認できたが,口腔から硬口蓋までの気道は描出できず,気道確保が困難であると考えられた.妊娠36週に選択帝王切開を施行した.手術時間は80分で,出血量は2200mlであったが輸血は要していない.腫瘤により右上肢のみの解出は困難と考え,SpO2モニターは装着せずに,超音波で胎児心拍をモニターした.ビデオ喉頭鏡,硬性鏡あるいは軟性鏡を用いて挿管を試みたが,腫瘤により口腔内が狭く観察困難であった.児の体位を保持し直し,最終的に喉頭展開により直視下で挿管し,EXIT開始後41分で3270g,男児の娩出となった.児は日齢2で気管切開と腫瘍部分切除を行い,リンパ管腫の病理診断となった.
【考察】
EXIT中ならびに出生後も気道確保ができず救命できなかった症例を経験したが,他の2例では気道確保は困難であったもののEXIT中に児の頸部の背屈を調整し直すことで気道確保が可能となった.