Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘤3

(S547)

肝細胞癌のラジオ波凝固療法における real-time image fusion の有用性と今後の課題

Achievements and future challenges for real-time image fusion in radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma

利國 信行, 松江 泰弘, 尾﨑 一晶, 木下 香織, 中村 彰伸, 土島 睦, 堤 幹宏

Nobuyuki TOSHIKUNI, Yasuhiro MATSUE, Kazuaki OZAKI, Kaori KINOSHITA, Akinobu NAKAMURA, Mutsumi TSUCHISHIMA, Mikihiro TSUTSUMI

金沢医科大学肝胆膵内科

Department of Hepatology, Kanazawa Medical University

キーワード :

【目的】
肝細胞癌(HCC)のラジオ波凝固療法(RFA)において,real-time image fusion(RTIF)は穿刺のナビゲーションに有用であり治療成績の向上に大きく貢献している.また,治療の効果予測,効果判定にも用いられつつあり,その応用範囲が広がっている.今回我々は,RTIFの効果予測,効果判定における有用性を検証しつつ,その有用性を高めるために克服されるべき課題を考察した.
【方法】
US装置およびRTIFにはPreirus(日立製作所),Real-time Virtual Sonography(RVS)を使用.Reference画像にはUS,CT,MRIのうち腫瘍が鮮明に描出されているシリーズを使用.RFAはCool-tip RFA system(Covidien)を用いて施行.(1)効果予測.単発HCC患者を対象とし,RTIFを用いなかった群(A群)と用いた群(B群)のアウトカムを比較.効果予測にはRVSのマーキング機能を用いた.すなわち,球マーカーをreference画像上の腫瘍の輪郭におくとreal-time US画像にも球マーカーが同期して描出される.治療直後はreal-time USでは,腫瘍はmicrobubbleによって視認性が低下するが,同期した球マーカーによって腫瘍の位置が同定できる.これを利用して,microbubbleが球マーカーを完全にカバーしているか否かで完全凝固の有無を予測した.効果判定は各セッション後の造影CTまたはMRIによって行った.評価項目は,第一セッションにおける完全凝固の予測的中率,合計セッション数,総穿刺回数,局所再発率.(2)効果判定.B群の患者を対象とした.効果判定の方法は,効果予測の場合と同様,球マーカーをreference画像上の腫瘍の輪郭におき,real-time CEUS上の治療によるdefectが同期した球マーカー全体をカバーしているか否かで完全凝固の有無を判定した.評価項目はRTIFによる効果判定と通常の造影CTまたはMRIによる効果判定の一致率.
【結果】
(1)A群は20例,B群は25例.年齢,性,腫瘍径(19 mm vs. 19 mm),腫瘍部位,背景肝予備能,CEUSガイド下穿刺の有無,人工胸水・腹水の有無,TACE併用の有無,すべての項目で有意差なし.RTIFに要する時間は約10分.しかし,呼吸止め困難例や正確なRTIFに必要な目立った構造物(門脈など)が腫瘍近傍にない例では時間がかかる傾向にあった.第一セッションにおける完全凝固の予測的中率はA群60%(12/20),B群88%(22/25)(P = 0.041).B群において予測が的中しなかった3例はいずれも造影CTまたはMRIでmargin不足と判定されていた.合計セッション数はA群1.5±0.7,B群1.1±0.3(P = 0.016)とRTIFを用いる方が有意に少ないセッション数で治療を完遂できた.一方,総穿刺回数はA群2.3±1.5,B群2.0±0.9(P = 0.18)と有意差なし.観察期間(平均21か月)における局所再発率はA群5.6%,B群5.3%(P = 0.72)と有意差なし.(2)RTIFによる効果判定と造影CTまたはMRIによる通常の効果判定の一致率は100%.Reference画像がCEUSの場合,real-time USとモダリティが同一のため,視覚的に評価が容易であった.
【考察】
RTIFはUSの欠点を補いかつその利点を最大限に生かす技術である.しかし,現状はマニュアル操作のため,RTIFの実行にはやや熟練を要する.今後の普及には誤差の少ない自動化技術の確立が必要である.
【結語】
HCCのRFAにおいて,RTIFは治療の効率化と患者負担軽減に貢献する.治療現場におけるRTIFのルーチン化にはさらなる技術の進歩が必要である.