Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘤2

(S546)

造影超音波検査を用いた肝細胞癌の微小血管浸潤診断

Diagnosis of the small blood vessel invasion to the hepatocellularcarcinoma using a contrast enhanced ultrasonography

渡邊 幸信, 小川 眞広, 熊川 まり子, 平山 みどり, 三浦 隆生, 松本 直樹, 中河原 浩史, 山本 敏樹, 森山 光彦, 杉谷 雅彦

Yukinobu WATANABE, Masahiro OGAWA, Mariko KUMAGAWA, Midori HIRAYAMA, Takao MIURA, Naoki MATSUMOTO, Hiroshi NAKAGAWARA, Toshiki YAMAMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA, Masahiko SUGITANI

1日本大学病院消化器内科, 2日本大学医学部附属板橋病院病理学教室

1Gastroenterology, Nihon University Hospital, 2Pathology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【目的】
肝細胞癌の診断においては,EOB造影MRI検査の登場により早期から癌の指摘が可能となった.しかし,背景に慢性肝障害を有する症例が多く,実臨床においては,癌との境界病変,初期の高分化型肝細胞癌,さらには判定に困惑するような淡い欠損像などが多数存在するために肝細胞相のみの欠損=即治療というわけにはいかないのが現状である.そこで治療介入のタイミングが腫瘍濃染の出現としている施設が多く血流感度の高い造影超音波検査の有用性は高いと考えられている.さらにこの高い時間・空間分解能を活かすことで比較的な小さな腫瘍においても微小脈管浸潤が診断できる可能性がある.微小血管浸潤症例においては安易な局所治療は好ましくないため,今回我々は切除症例の多い肝細胞癌を対象として造影超音波検査を用いた微小脈管浸潤の評価について検討したので報告する.
【方法】
2008~2015年の8年間に当院で総合画像診断が施行され切除症例の肝細胞癌症例152症例を対象とし病理組織学的にvp1,vv1症例に対する5cm以下の腫瘍の造影超音波検査を再評価しVp1,Vv1の肝細胞癌の特徴について検討した.
【成績】
切除症例の腫瘍肉眼分類の内訳は,境界不明瞭型9%,単純結節型30%,単純結節周囲増殖型20%,多結節癒合型35%,浸潤型4%,塊状型2%であり脈管浸潤の割合は全体の16.7%でありこの中で脈管浸潤の有する症例の内訳は,境界不明瞭型0%,単純結節型0%,単純結節周囲増殖型11%,多結節癒合型67%,浸潤型11%,塊状型11%であった.5cm以下に症例を絞ると多結節癒合型がほとんどを占め(平均腫瘍径は26mm)vp1,vv1に付いては多結節癒合型特に注意が必要であると考えられた.造影超音波検査の特徴としては,腫瘍濃染は他の肝細胞がんと同等に早期より腫瘍濃染像を呈するが,比較的早期より欠損像を呈していた.また腫瘍周辺および辺縁に走行する脈管の圧排像や壁の不整像を呈する事が大きな特徴であった.
【考案】
脈管浸潤は予後因子として重要となるため術前診断の有用性である.しかし画像診断で的確に指摘できる脈管浸潤はVp3・4など比較的太い脈管のものであり,大型の腫瘍であることが多かった.近年画像診断の進歩と共に磁気センサー対応の超音波診断装置により統合画像診断も可能となりこれまで以上に最注目すべき局所にFocus絞ることにより秒間約40枚の他の検査では得られない時間分解能を高めた精密診断が可能であり詳細な診断が可能になることが確認あされた.今後治療適応を決定する際の精密診断としての造影超音波診断の有用性が高まることが期待される.
【結語】
肝細胞癌の早期脈管浸潤を診断するためには腫瘍肉眼分類と腫瘍近傍の脈管の評価が重要でありこのためには時間・空間分解能が高い検査が必要であり造影超音波検査が極めて有用であると考えられた.