麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 太田 雄, 大竹 晋

Kazunobu ASO, Mituyoshi OKADA, Yosui TAMAKI, Yu OTA, Shin OTAKE

旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野

Division of Metabolism and Biosystemic Science, Department of Medicine, Asahikawa Medical University

キーワード :

【はじめに】
近年の画像処理技術の進歩により，造影3D超音波（造影3D）は高速・高画質へと進化し，消化器領域では肝腫瘍を中心に臨床応用が進められている．これまで我々は，メカニカルプローブを用いた造影3D（造影3D従来法）の肝癌診断に関する検討を行い，同法には腫瘍血管や腫瘍形態をより明瞭に描出できる効果があり，肝癌の精密病態診断に有用であることを報告してきた．さらに最近，磁気センサーを付けた汎用プローブを用いてvolume dataを簡便に取得できるSmart Sensor 3Dが開発され，これに対応する造影3Dモードとして待望のamplitude modulation（AM）が採用された．この技法は，従来の方式とは異なる低音圧撮影による造影3Dが行える可能性があり期待される．そこで今回は肝腫瘍性病変における造影Smart Sensor 3Dの臨床応用について報告し，造影3D従来法との比較からみた本法の有用性について議論したい．
【対象】
造影Smart Sensor 3Dを施行した肝腫瘍性病変5例，内訳は肝細胞癌（HCC）2例，肝血管筋脂肪腫（AML）1例，肝悪性リンパ腫（ML）1例，胆管周囲嚢胞（PC）1例であった．腫瘍径中央値は36.0mm（13.6.0-93.6mm），腫瘍深度中央値は7.0cm（6.1-10.3cm）であった．
【方法】
1．画像取得：使用装置はAplio i800．造影モードはAM法3.0MHzまたは3.3MHz，MI値0.18-0.19に設定し，Sonazoid 0.5ml/body投与にて撮像した．画像取得は血管相と後血管相にて，腫瘍全体を含むように一定の速度で扇動走査を行い，複数回volume dataを取得した．2．画像評価：それぞれの時相においてMPR像を作成し，同時期（±2週以内）に施行した造影3D従来法によるMPR像と比較検討した．
【結果】
1．血管相の検討：腫瘍内の造影効果を明瞭，一部不明瞭，評価困難の三段階に分けて検討した結果，造影Smart Sensor 3Dの造影効果は従来法よりも有意に明瞭であると判定された．（P=0.0168）．2．後血管相の検討：腫瘍欠損像の描出について明瞭，一部不明瞭，評価困難の三段階に分けて検討した結果，両者に差は認めなかった（P=0.1336）．
【考察】
肝腫瘍における造影Smart Sensor 3Dの血流診断能は造影3D従来法に比し同等以上であり，また後血管相イメージについても造影3D従来法に匹敵する形態診断能を持つことが示された．
【結語】
造影Smart Sensor 3Dは従来の造影3Dでは困難と考えられた低音圧撮影を可能にしており，同法は従来法の弱点の一つであった高輝度病変の造影3D評価に有用と考えられた．