渡辺 智美, 石田 秀明, 渡部 多佳子, 大山 葉子, 長沼 裕子, 長井 裕, 小川 眞広, 黒田 英克

Satomi WATANABE, Hideaki ISHIDA, Takako WATANABE, Youko OOYAMA, Hiroko NAGANUMA, Hiroshi NAGAI, Masahiro OGAWA, Hidekatsu KURODA

¹地方独立行政法人市立秋田総合病院臨床検査科, ²秋田赤十字病院超音波センター, ³秋田厚生医療センター臨床検査科, ⁴横手市立病院内科, ⁵N.G.I研究所超音波担当, ⁶日本大学病院消化器内科, ⁷岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野

¹Department of Clinical Laboratory, Akita City Hospital, ²Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ³Department of Clinical Laboratory, Akita Kohsei Medical Center, ⁴Department of Internal Medicine, Yokote City Hospital, ⁵Diagnostic Ultrasound, New Generation Imaging Laboratory, ⁶Gastroenterology, Nihon University Hospital, ⁷Division of Hepatology,Department of Internal Medicine, Iwate Medical University

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【はじめに】
肝内石灰化転移巣の血流の状態を観察する際，カラードプラでは石灰化に起因するカラーノイズ等のため腫瘍内の血流の観察に苦慮し，最終評価は造影超音波の結果におもねる場合が多い．今回我々は石灰化を伴った肝転移巣の血流動態の把握にSuperb microvascular imaging（SMI）が有用であったので，その代表例を供覧しつつ報告したい．
【使用診断装置等】
東芝社製：Aplio500．造影剤はソナゾイド（第一三共社）を用い，造影方法は通常の肝腫瘍のそれに準じた．
【対象と方法】
超音波とCT検査で転移巣内に石灰化（+）と判定された20例（男性13例，女性7例，平均年齢64.8歳（36-88歳）に関し，石灰化転移巣内部の血流観察に関しSMIがどの程度寄与出来るか次の項目を検討した．なお観察断面は原則として右肋間とし，この視野の最も観察しやすい病変とした．ちなみに石灰化転移の原発腫瘍は，大腸癌18例，胃癌1例，乳癌1例である．検討項目は，a）通常のカラードプラ検査とSMIによる転移巣内の血流観察能の優劣，b）通常2x2-3x3cm程度に設定されているカーソル径を5x5cm程度まで拡大した時の両者の血流観察能の優劣，である．なお画像の判定は肝の造影超音波検査で7年以上の経験のある専門医2名の合議で行った．
【結果】
a）SMIが観察した全病変の血流観察能で従来のカラードプラを凌駕していた．b）カーソル径を拡大すると画質が劣化し血流観察能が低下した．
【考察】
Superb microvascular imaging（SMI）は新しいアルゴリズムを用いカーソル内の観察可能領域では，a）高フレームレート（40-60/sec）で，かつb）1-2cm/secといった低速血流を拾い上げることが可能となっている．これは搭載されたアルゴリズムで，1）低速のノイズ（モーションアーチファクトなど）と低速血流を分別可能になったこと．2）カーソル外のフレームレートを極端に遅くしカーソル内のフレームレートを増していること．が基盤となっている．
石灰化が超音波診断の妨げになっていることは以前から知られており，カラードプラでも石灰化した箇所からカラーノイズ（一種のモーションアーチファクト）が生じ超音波診断に影響することがある．今回このカラーノイズがSMIで軽減出来ないか検討し良好な結果が得られた．しかし，カーソルを広げると画質が劣化するため，大きな病変の観察にはカーソルを絶え間なく移動させる等の工夫が必要であった．これは今後改善すべきと思われた．