Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ3

(S538)

C型慢性肝疾患症例におけるインターフェロンフリー治療後のSWEとM2BPGiの変化の比較

Change of shear wave elastography and M2BPGi in the patients with successful outcome of direct acting antiviral treatment to hepatitis C infection

佐藤 秀一, 飛田 博史, 新田 江里, 福間 麻子, 矢﨑 友隆, 三宅 達也

Shuichi SATO, Hiroshi TOBITA, Eri NITTA, Asako FUKUMA, Tomotaka YAZAKI, Tatsuya MIYAKE

1島根大学医学部附属病院光学医療診療部, 2島根大学医学部附属病院肝臓内科, 3島根大学医学部附属病院中央検査部

1Division of Endoscopy, Shimane University Hospital, 2Hepatology, Shimane University Hospital, 3Central Clinical Laboratory, Shimane University Hospital

キーワード :

【目的】
C型慢性肝疾患に対する治療は副作用が少なくC型肝炎ウイルス(HCV)排除効果の高いDirect acting antivirals(DAAs)による治療の普及により,多くの症例でHCVの排除(SVR)に成功し,AST,ALTの正常化やアルブミン値,血小板数の改善が見られることが報告されている.しかしながら,SVR後の肝線維化の改善を侵襲的な肝生検で評価していくのは困難である.近年超音波を用いた非侵襲的肝弾性度診断法が進歩して普及しつつある.また,M2BPGiが肝臓の線維化ステージの進展を反映する糖鎖マーカーとして開発され,肝線維化進展予測だけでなく,肝発癌予測マーカーとしても利用されてきている.しかしながら,M2BPGiおよび超音波を用いた非侵襲的肝弾性度診断がC型肝炎ウイルス排除後,どのように変化して,両者の変化は一致しているのか否かは明らかではない.今回われわれはC型慢性肝疾患症例でSVRが得られた患者で,治療後6ヶ月の間隔でM2BPGiおよびShear wave elastography(SWE)が同時に施行された症例でその変化を比較検討した.
【方法】
対象は2014年9月以降でDAAs治療が開始され,M2BPGiおよびSWEが6ヶ月の間隔で測定された42例(男/女14/28,年齢67.7±13.4歳,肝癌治癒治療後4例,体重54.1±10.2kg,遺伝子型1a/1b/2a/2b 1/16/20/5,ダクラタスビル+アスナプレビル7例,ソフォスブビル+レジパスビル7例,ソフォスブビル+リバビリン25例,パリタプレビル+オムビタスビル3例)とした.SWE測定に用いた使用機種は東芝社製Aplio500TMでDAAs治療終了後1回目のSWE測定までの期間は100±115(0-457)日,SWE時の腹壁厚16.3±5.4mmで測定回数は7.8±2.3回でmeanを採用した.M2BPGi測定はSWE測定日と同日に施行した.2回目のSWEおよびM2BPGi測定は1回目の後6ヵ月後のものを採用した.
【結果】
SWE(m/s)は前値より低下した症例は24例(57%)で,前値1.65±0.27,6ヵ月後1.59±0.29で有意な改善を認めなかった.M2BPGiは前値より低下した症例は28例(67%)で,前値1.89±1.41,6ヵ月後1.48±0.99と有意な改善を認めた(P=0.01).
両者ともに低下した症例は18例(43%)であった.次に,75歳未満(28例)と以上(14例)で比較検討した.1回目のSWE(m/s)は75歳以上1.70,75歳未満1.61で有意な差は認めなかったが,その時のM2BPGiは75歳以上2.64,75歳未満1.52で,75歳以上で有意に高値であった(P=0.017).SWEの変化を見てみると,75歳未満のSWE低下例は18例(64%),75歳以上では6例(43%)であった.75歳未満ではSWE(m/s)前値1.61,6ヵ月後1.52と有意な改善を認めたが(P=0.031)75歳以上ではSWE(m/s)前値1.70,6ヵ月後1.754と全く改善を認めなかった.M2BPGiは75歳以上で前値2.64,6ヵ月後2.10(P=0.024),75歳未満で前値1.52,6ヵ月後1.17(P=0.014)と有意な改善を認めた.腹壁20mm以上と未満,DAA治療終了6ヶ月以上と未満でSWEの変化を比較したが,SWEの変化に明らかな違いは見られなかった.
【結論】
今回の横断的検討ではSWEとM2BPGiの変化の一致率は低く,特に後期高齢者でのSWEの改善がない事が結果に影響していた.DAAs治療は高齢者に適応が拡大しているが,そのSVR後の線維化改善の有無の評価に関しては今後十分な検討が必要であると考えられた.