Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ3

(S537)

C型肝炎に対するDAAs導入前後のSWE値の変化についての検討

Shear wave elastography in hepatitis C: Comparison of patients before and after Direct Acting Antivirals therapy

渡邊 幸信, 小川 眞広, 熊川 まり子, 平山 みどり, 高安 賢太郎, 三浦 隆生, 松本 直樹, 中河原 浩史, 山本 敏樹, 森山 光彦

Yukinobu WATANABE, Masahiro OGAWA, Mariko KUMAGAWA, Midori HIRAYAMA, Kentaro TAKAYASU, Takao MIURA, Naoki MATSUMOTO, Hiroshi NAKAGAWARA, Toshiki YAMAMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

日本大学病院消化器内科

Gastroenterology, Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
Shear wave elastography(以下SWE)は,組織中のShear wave伝搬速度を測定することによって組織の弾性を計測する技術であり,びまん性肝疾患における肝硬度の推測に有用である.近年,C型肝炎においては直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals ; DAAs)の登場により,高確率でsustained virological response(以下SVR)を達成できるようになった.今回,我々はDAAs導入前後でSWEの値がどのように変化するかを検討したので報告する.
【対象】
対象はDAAsを導入し,導入前と治療後にSWEを行ったC型肝炎患者,31症例とした.脂肪肝,自己免疫性疾患,慢性心不全,および膠原病例は対象から除外した.
【方法】
使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQ E9,東芝メディカルシステムズ社製Aplio500である.測定は背臥位でBモード観察下に右肋間から行い,測定値はSWの伝搬速度(m/s:以下Vs)で表し,得られた10回の計測値の中央値を検討に用いた.DAAsを導入する前,SVR0~12,SVR24~48においてVsを測定し,数値の変化について比較検討した.また,トランスアミナーゼ高値症例,正常症例に分け,同様の検討を行った.尚,使用装置によって,Vsの測定値が異なるため,今回は装置別に検討を行った(Aplio500:20症例,LOGIQ E9:11症例).
【結果】
Aplio500 20症例において,DAAs導入前/SVR0-12のVsは2.10/1.88であり,有意にVsの低下を認めた(P=0.006).LOGIQ E9 11症例においてはDAAs導入前/SVR0-12のVsは1.41/1.34であり,Vs値の低下傾向を認めた(P=0.15).Aplio500症例において,導入前のトランスアミラーゼ値が正常値を超えていえる症例(n=12),正常範囲内の症例(n=8)に分類し,DAAs導入前/SVR0-12のVsを測定したところ,2.39/2.06,1.65/1.67であり,トランスアミナーゼ高値症例において有意なVsの低下を認めた(P=0.004).
装置に関わらず,SVR0-12とSVR24-48でのVsに有意な差は認めなかった.
【考察】
SWEの値は肝線維化の程度と相関すると報告されている.今回,DAAsを導入した多くの症例で測定値の低下を認めた.DAAs導入による短期間での線維化の改善は考えにくく,トランスアミナーゼ高値症例に有意な低下を認めたことより,線維化以外の因子にも影響されることが示唆された.また,SVR0-12とSVR24-48に変化を認めなかったことより,線維化の改善については,長期の観察が必要となることが予想され,症例を集積した上での更なる検討を要すると考えられた.