Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ2

(S536)

VTQにおけるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)診断の有用性

Utility of VTQ(Virtual Touch Quantification) for diagnosis of NASH

吉田 昌弘, 西村 貴士, 青木 智子, 中野 智景, 會澤 信弘, 池田 直人, 廣田 誠一, 藤元 治朗, 西口 修平, 飯島 尋子

Masahiro YOSHIDA, Takashi NISHIMURA, Tomoko AOKI, Chikage NAKANO, Nobuhiro AIZAWA, Naoto IKEDA, Seiichi HIROTA, Jiro FUJIMOTO, Shuhei NISHIGUCHI, Hiroko IIJIMA

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科・肝胆膵科, 3兵庫医科大学病院病理部, 4兵庫医科大学肝胆膵外科, 5公立八鹿病院内科

1Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Depertment of Internal Medicine,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, 3Depertment of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine, 4Depertment of Surgery,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, 5Internal Medicine, Yoka Hospital

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪肝炎(non‐alcoholic steatohepatitis: NASH)は肝硬変への進行や肝発癌の可能性のある疾患であり,早期診断が重要である.NASHの確定診断は,肝生検による組織診断が必要であるが侵襲的であることやサンプリングエラーなどの問題があり,非侵襲的診断法が望まれている.VTQ(Virtual Touch Quantification)は非侵襲的肝線維化診断として多くの報告がなされている.そこで,NASHにおける肝硬度をNAFLと比較しその有用性および診断能を検討した.
【方法】
2008年11月から2016年4月までに当院でVTQを施行し肝生検で組織学的に診断された74例のNAFLD患者(NAFL5例,NASH69例:男性38例,女性36例,平均年齢 46.2±14.4歳)を対象とした.NASHの病理診断はBruntの分類を用いた.NASHにおける肝硬度をVTQを用いてVs値を測定し,NAFL(non‐alcohoic fatty liver)との比較,臨床的パラメータとの相関を検討した.VTQの測定はS2000/S3000(Siemens社製)を使用した.VTQの測定は右肋間で肝表より約1cmにROIの上端を設定し,安定して測定できた5回のVs値の平均値を測定結果とし,四分値範囲/平均値が30%を超えるものは除外した.B-modeによる脂肪化の程度をエコー深部減衰の程度により軽度,中度,高度に分類した.本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている.
【結果】
NASH69例のStageとGradeはそれぞれ,Stgae1:5例,Stgae2:43例,Stgae3:19例,Stgae4:2例,Grade1:5例,Grade2:36例,Grade3:29例であった.NASHの各線維化ステージの平均Vs値(m/s)は,NAFLの1.03±0.11に対して,Stage1:1.06±0.07,Stage2:1.14±0.19,Stage3:1.54±0.64,Stage4:3.08±0.25と線維化stageの進行に伴いVs値は上昇する傾向がみられた.線維化stage3以上のNASHの鑑別能をROC解析したところ,Cut off値を1.29としたときの曲線下面積は0.752でであり,感度は62%,特異度は87%であった.Grade別にみると,grade1:1.09±0.17,grade2:1.37±0.59,grade:3.1.23±0.42であり有意差を認めなかった.Vs値と臨床的パラメータとの相関についてはT-chol(r=-0.438),ヒアルロン酸(r=0.338),Ⅳ型コラーゲン7S(r=0.456),APRI(r=0.313)と相関を認めた(P<0.01~P<0.001).
脂肪化の程度別では,脂肪化(なし:1.91±1.17,軽度:1.23±0.48,中度:1.28±0.52,高度:1.23±0.34),脂肪化(5~33%:1.37±0.69,34~66%:1.25±0.46,67%以上:1.20±0.22),すべての群間に有意差を認めなかった.
【結語】
NASHにおいても肝線維stageの進行に伴いVs値は上昇し,Gradeや脂肪化の影響を受けにくく,VTQはNASHの肝線維化の評価に有用であることが示唆された.