松下 裕, 新垣 直樹, 井田 良幸, 田淵 圭佑, 中塚 賢一, 森井 眞治, 瀧口 良重, 大石 博晃, 玉井 秀幸

Yu MATSUSHITA, Naoki SHINGAKI, Yoshiyuki IDA, Keisuke TABUCHI, Kenichi NAKATSUKA, Shinji MORII, Yoshie TAKIGUCHI, Hiroaki OISHI, Hideyuki TAMAI

¹和歌山県立医科大学附属病院中央検査部, ²和歌山県立医科大学第二内科

¹Central Laboratory, Wakayama Medical University Hospital, ²The Second Department of Internal Medicine, Wakayama Medical University

キーワード :

【背景】
C型肝炎において肝線維化の進行度を診断することは臨床上極めて重要である．近年，組織弾性を直接測定できる装置として開発された超音波エラストグラフィにより，定量的に肝線維化を評価することが可能となってきている．しかし，様々な装置が開発されているが，測定原理，測定方法，測定結果などが異なり，どの装置が優れているのか明らかではない．今回我々は，Strain imagingを用いたReal-time Tissue Elastography（RTE）とShear wave imagingを用いたVirtual Touch Quantification（VTQ）による肝硬変診断能を比較した．
【目的】
RTEとVTQの肝硬変診断能を比較する．
【対象と方法】
当院で2014年11月から2016年11月まで腹部超音波検査を施行し，VTQとRTEを施行したC型慢性肝疾患患者401例中，抗ウイルス治療施行後の症例を除いた97例を対象とした．平均年齢66.0±10.9歳．男性46例，女性51例．非肝硬変59例，肝硬変38例．平均Vs値1.47±0.56m/s，平均LFI 2.76±0.65．VTQ，RTEによる肝線維化評価は，いずれも同じ日に，同じ検者により，同一患者の同一右肋間走査で行われた．VTQは持田シーメンス社Acuson S2000を使用．肝右葉前区域の肝表から2cmの深度にROIを設定し，shear wave velocity（Vs）値を10回測定し平均値を算出した．RTEはHITACHI社HI VISION Ascendusを使用し，肝表から1cmの深度にROIを設定し，息止め下で心拍動により周期的にRTE像が描画されたところで，Liver Fibrosis Index（LFI）を5回計測し平均値を算出した．肝硬変診断は，画像検査での肝硬変に特徴的な形態変化，門脈圧亢進に基づく脾腫，側副血行路の有無などを基に臨床的に判断した．Vs値，LFI，線維化マーカー（Ⅳ型コラーゲン7s，ヒアルロン酸，APRI，FIB4 index），それぞれの肝硬変診断のROC曲線を作成し，ROC曲線下面積（AUROC）値を比較した．APRI，FIB4 indexは以下の式を用いて算出した．
APRI＝（AST［IU/L］/ASTの正常上限値）/血小板［10-9/L］×100
FIB4 index =（年齢×AST［IU/L］）/（血小板［10-9/L］×ALT［IU/L］0.5）
【結果】
Vs値，FIB4 index，Ⅳ型コラーゲン7S，ヒアルロン酸，APRIを用いた肝硬変診断のAUROC値は，それぞれ0.813，0.815，0.765，0.779，0.790と（p＜0.001），いずれも中等度の診断精度であったが，LFIのAUROC値は0.596（p＝0.138）と低精度であった．
【結論】
Strain ElastographyであるRTEとShear wave ElastographyであるVTQの肝硬変診断能を同一患者において直接比較した結果，VTQの方がRTEよりも明らかに優れており，その診断能は線維化マーカーと同等であった．