Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ2

(S535)

Shear Wave Elastographyにおける肝硬度測定困難要因

The factor of failure in liver stiffness measurement using Shear Wave Elastography

西脇 隆, 松居 剛志, 野村 寛, 竹内 有加里, 真口 宏介

Takashi NISHIWAKI, Takeshi MATSUI, Hiroshi NOMURA, Yukari TAKEUCHI, Hiroyuki MAGUCHI

1手稲渓仁会病院診療技術部, 2手稲渓仁会病院消化器病センター, 3手稲渓仁会病院臨床検査部

1Department of Radiology, Teine Keijinkai Hospital, 2Center for Gastroenterology, Teine Keijinkai Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【緒言】
Shear Waveを用いた肝硬度定量化の有用性が報告されてきているが,時に測定困難な症例に遭遇する.そこでShear Wave Elastographyを施行した症例について,測定困難となる要因を後方視的に検討した.
【対象と測定方法】
対象は2015年2月から2016年11月の間に当院で肝臓に対しShear Wave Elastographyを施行した176例(男性83/女性93,年齢中央値65.0歳(57.8‐71.0)).使用装置はGE社製LOGIQ E9,探触子はコンベックスC1-6 XD clear.被検者を仰臥位にして両腕を挙上させ,右肋間走査で肝S5を描出しながら肝表から1~2cmの深さにて血管や腫瘤像等が入らない様に台形ROIを置き,呼気止めの状態でShear Waveの速度を示すカラーマップを取得した.ROI内にカラーマップが充分に表示され,ほぼ均一であるものを有効例,全体的にモザイクや縦縞が生じたもの,カラー表示が乏しいものを無効例とした.
【解析方法】
有効例群と無効例群の2群間における,年齢,性別,皮膚面から腹壁までの厚さ(以下SAD:mm),臨床的肝硬変の有無(LC or non LC)の統計学的有意差を求めた.また,有効または無効を従属変数,SADおよびLCの有無をそれぞれ独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】
176例中,有効例は162例(92.0%),無効例は14例(8.0%)であった.年齢を比較すると,有効例群65.0歳,無効例群66.5歳,p=0.479であり,有意差を認めなかった.性別においても,有効例群:男性76/女性86,無効例群:男性7/女性7,p=1.000で,有意差を認めなかった.SADにおいては,有効例群15.8mm,無効例群22.6mm,p<0.001であり,無効例群のSADは有意に高かった.LCの有無においても,有効例群:LC17/non LC145,無効例群:LC6/non LC8,non LCに対するLCのオッズ比は6.29,95%信頼区間は1.60‐23.68,p=0.004であり,無効例群でLCの比率が有意に高かった.また,多重ロジスティック回帰分析では,SADのオッズ比は1.72,95%信頼区間は1.36‐2.19,p<0.001,non LCに対するLCのオッズ比は11.6,95%信頼区間は2.15‐62.6,p=0.004であり,SADとLCの有無はどちらも測定困難となる因子であった.
【考察】
SADの値が大きいほど測定困難となる原因としては,厚い皮下組織内での反射や吸収による減衰が考えられた.LCの症例で有意に測定困難となった原因としては,肝表面の凹凸不整および実質粗に起因する超音波の散乱による減衰が考えられた.
【結語】
Shear Wave Elastographyを用いた肝硬度測定において測定困難となる要因として,皮膚面から腹壁までの厚さと臨床的肝硬変の有無が示唆された.