Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ2

(S534)

腹水患者におけるShear wave elastographyでの肝線維化評価

Shear Wave Elastography for Evaluation of Liver Fibrosis for the patient with ascites

松居 剛志, 西脇 隆, 竹内 有加里

Takeshi MATSUI, Takashi NISHIWAKI, Yukari TAKEUCHI

1手稲渓仁会病院消化器病センター, 2手稲渓仁会病院診療技術部, 3手稲渓仁会病院臨床検査部

1Center for Gastroenterology, Teine-Keijinkai Hospital, 2Department of Radiology, Teine-Keijinkai Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Teine-Keijinkai Hospital

キーワード :

【目的】
近年,血液検査での肝線維化マーカーやMRIエラストグラフィーが登場し,低侵襲的な肝線維化の評価が注目されている.超音波でもいくつかの肝線維化評価法がありShear wave elastography(SWE)はその一つである.SWEは用手的な圧迫ではなく,原理上は腹水があっても評価可能と考えられている.しかしながら,これまで腹水患者におけるSWEでの肝線維化評価の報告はない.今回,腹水患者におけるSWEを用いた肝線維化評価について検討した.
【対象と方法】
対象は2016年3月から2016年12月までにSWE肝硬度を測定した101例.これらを腹水群10例,非腹水群91例に分類し,SWEにより得られた肝硬度とFibrosis-4(FIB-4)index,Asparate aminotransferase-platelet index(APRI),血小板との相関性を検討した.次に腹水群において短期間で複数回SWEを施行した3例について経時的変化を検討した.使用機器は,Aplio500,コンベックスPVT-375BT/SC.右肋間走査にて超音波画像のDepthを10cm前後に固定し,安定した6回の平均値を被検者の弾性定量値(V)とした.
【成績】
対象(腹水/非腹水)の中央値年齢は68.5/64.0歳で男女比は6:4/46:45,HBsAg陽性2/11,HCV抗体陽性2/10.血液検査の中央値は,血小板数11.7万/17.6万/μL,AST 31.5/25.0IU/L,ALT 15.0/21.0IU/L,Alb 2.70/4.25 g/dl,T-Bi1 1.5/0.7mg/dL,FIB-4 index 6.49/2.02,APRI 1.009/0.389であった.Vの中央値は2.55/1.47m/sであり,腹水群では血小板(r=0.349,p=0.324),FIB-4 index(r=0.195,p=0.590),APRI(r=0.326,p=0.357)と相関を示さなかったのに対し,非腹水群では血小板(r=-0.397,p<0.0001)と負の相関を示し,FIB-4 index(r=0.633,p<0.0001)とAPRI(r=0.649,p<0.0001)とは正の相関を示した.経時的に観察できた3例中,腹水軽快1例(消失はせず)ではVは低下(2.05 m/s→1.95 m/s),腹水消失1例でも低下した(3.53 m/s→3.08 m/s).さらに腹水が不変であった1例でも(5.15 m/s→4.12 m/s)と低下していた.なお,この間の血小板,FIB-4index,APRIは変化を認めなかった.
【まとめ】
SWEでのVは腹水患者では血中線維化マーカーFIB-4 index,APRI,血小板とは相関を示さなかった.腹水患者はほとんどが強い肝硬変であったため,肝表面での散乱や組織の不均一さが影響した可能性があり,経時的に観察できた3例でもVは短期間で変化しており,腹水患者のSWEによる肝線維化評価は慎重に行うべきと考えられた.