Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ1

(S532)

Shear wave elastographyによる自己免疫性肝炎の線維化評価

Evaluation of fibrosis in patients with autoimmune hepatitis by shear wave elastography

徳富 治彦, 大川 修, 須田 季晋, 大浦 亮祐, 行徳 芳則, 正岡 梨音, 藤本 洋, 金子 真由子, 玉野 正也

Naohiko TOKUTOMI, Osamu OKAWA, Toshikuni SUDA, Ryosuke OURA, Yoshinori GYOTOKU, Rion MASAOKA, Yo FUJIMOTO, Mayuko KANEKO, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
Shear wave elastography(SWE)によるに自己免疫性肝炎の線維化評価について検討することを目的とした.
【対象】
肝生検が施行され,組織学的に診断し得た自己免疫性肝炎13例を対象とした.平均年齢は58.5(26-75)歳,男性1例,女性12例であった.
【方法】
SWEの測定にはGE Healthcare社のLOGIQ E9を用いた.測定は肝生検施行時に空腹時に背臥位でBモード観察下に右肋間から行い,測定値はSWの伝搬速度(m/s:以下Vs)で表され,得られた10回の計測値の中央値を検討に用いた.この際,測定成功率80%以下の症例と測定値のばらつきが30%以上の症例は検討から除外した.肝生検によって得られた組織診断を新犬山分類に準じて分類し,VsとA因子,F因子との関係を検討した.PSL治療後に再度SWEを施行し得た症例では治療前後のVsを比較した.
【結果】
13例の肝生検施行時のVsの平均は1.76±0.35(1.31-2.72)m/sであった.肝生検によるA因子別のVSの平均は,A1(n=2)が1.53,A2(n=9)が1.80,A3(n=2)が1.81であり,A因子が高いほどVsは高値を呈する傾向にあった.F因子別のVSの平均は,F1(n=6)が1.59,F2(n=3)が1.80,F3(n=4)が2.00であり,F因子が高いほどVsは高値を呈した.PSL治療後のALTが正常化した後に再度SWEを施行し得た症例は4例であった.組織学的にはA2が3例,A3が1例,F3が4例であり,比較的炎症も線維化も高度の症例であった.これら4例の治療前のVsの平均は2.00m/s,治療後は1.58m/sであり,治療後にVsは改善した.
【考察】
当科での検討では正常肝のVsは1.2-1.3m/s程度である.Vsは組織の弾性(線維化)のみで決まるのではなく粘性にも影響され,肝組織に炎症が存在する場合は間質への浸出液の増加や細胞浸潤によって組織の粘性が増加してVsが速くなると予測される.今回の検討では未治療の自己免疫性肝炎のVsはF因子のみならずA因子にも影響されることが確認された.一方で,PSL治療後にVsは低下したが正常肝の値までは改善しなかった.これは,Vsの改善が肝炎の沈静化を反映し,線維化の影響が残存するためと推測された.
【結論】
未治療の自己免疫性肝炎のVsは肝の炎症と線維化の双方を反映する.SWEによって自己免疫性肝炎の線維化を推測するためにはPSL治療後の測定も考慮すべきである.