Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 消化器
脂肪肝2

(S531)

肝臓内の脂肪酸種特定に向けた音響物性解析

Analysis of acoustic properties for identification of fatty acid species in the liver

徳永 栞, 伊藤 一陽, 丸山 紀史, 吉田 憲司, 山口 匡

Shiori TOKUNAGA, Kazuyo ITO, Hitoshi MARUYAMA, Kenji YOSHIDA, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学研究院

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Graduate School of Medicine, Chiba University

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の非侵襲定量診断を実現するための手法として,NAFLDの発現や進展など一連の病態に深く関与していることが指摘されている脂肪酸について,超音波観察により特定することを検討している.本研究では,生体で代表的な5種の脂肪酸(オレイン酸,パルミチン酸,パルミトオレイン酸,リノール酸,αリノレン酸)を主な対象とし,各種脂肪酸の音響的性質について,中心周波数80 MHzおよび250 MHzの超音波により観察し検討した.
【方法】
はじめに,脂肪酸単独での検討として,ポリプロピレンチューブに至適溶媒で溶解した各種脂肪酸1.5 mlを静置し,バイオ超音波顕微鏡にて80 MHz,250 MHzの超音波で観察した.次に,脂肪酸処理細胞での検討として,Huh7 cellを使用し,35 mm dishに500,000 cells/wellを培養したのち,既報に従って脂肪酸処理(500μM,9h)を行い,同システムで観察した.これらの観察結果より,それぞれについての音響インピーダンスを算出した.
【結果と考察】
脂肪酸での検討結果として,脂肪酸のインピーダンスはパルミトオレイン酸,リノール酸,パルミチン酸,αリノレン酸,オレイン酸の順で高値となり,これは脂肪酸処理モデルにおいても同様であった.なお,脂肪酸処理モデルにおける観察では,経時変化による細胞の死滅と超音波の照射による影響とを分けて検討しているため,本結果は各脂肪酸特有の性質が示されているといえる.
現在,上記試料の音速についても検討を進めており,音響インピーダンスの結果と併せて理解することで,肝臓内に蓄積された脂肪種を臨床レベルの周波数帯で判定することが可能になると考える.