斎藤 聡, 伝法 秀幸, 窪田 幸一, 藤山 俊一郎, 小林 正宏

Saitoh SATOSHI, Hideyuki DENPO, Koichi KUBOTA, Shunichiro FUJIYAMA, Masahiro KOBAYASHI

¹虎の門病院肝臓センター, ²虎の門病院分院臨床検査部

¹Department of Hepatology, Toranomon Hospital, ²Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya

キーワード :

【目的】
近年，脂肪性肝疾患が注目を浴びている．従来，Bモード診断ではいずれも脂肪肝であった．一方，脂肪性肝疾患にはアルコール性肝障害（ALD）とNone Alcohlic Fatty Liver Disease（NAFLD）があり，後者はさらにNon Alcohlic Statohepatitis（NASH）とNon Alcohlic Fatty Liver（NAFL）に分類される．進行する疾患として，ALDとNASHの拾い上げは重要であり，いずれも，病理組織学的診断はSteatohepatitisであり，鑑別困難である．このBモード所見に関して検討した．
【対象と方法】
対象は各種肝疾患854症例，年齢は20～93歳（中央値64歳），男女比は472：382，BMIは17～39（中央値22）．内訳はALD141例，NASH46例，NAFL66例，C型慢性肝疾患268例，B型慢性肝疾患154例，PBC28例，AIH12例，他．NASHは全例組織学的な診断である．使用装置はAplio XGでBT543コンベックスプローブを使用し，bright liverと肝腎コントラスト，胆嚢床付近のFocal fatty sraed areaの所見に加えて，precision無・有で肝表面および肝内部から出現する簾状エコー所見の有無を検討し，precisionの有無に関わらず見られるものをありとし，また，体表面や皮下組織からと思われるものは除外した．他にはbright pancrease（BP）の有無を検討した．
【成績】
1．簾状エコー所見の出現率は，ALD 80％，NASH 78％，NAFL 27％，HBV 9％，HCV 8％，AIH 0％，PBC 0％であった．2．アルコール性肝疾患の内訳別簾状エコーの出現率は肝硬変82％，アルコール性Steatohepatitis（ASH）88％，アルコール性肝線維症62％であった．3．Bモードで脂肪肝の所見のみられた症例では簾状エコーの出現率はASH 88％，NASH 78％，NAFL 27％，HBV 25％，HCV 30％であった．4．簾状エコー＋BPの出現率はASH 84％，NASH 72％，NAFL 20％，HBV 5％，HCV 5％であった．NASHの組織学的な所見とも現在検討中である．
【考案】
NASHは高率にインスリン抵抗性を合併する．従来よりはインスリン抵抗性とBPの関連が指摘されている．簾状エコーをSteatohepatitisの一所見と考えるとこれにBPを加えることでNASHおよびASHのBモード所見としての特徴的な所見と考えることが可能と思われた．
【結語】
脂肪性肝疾患において脂肪肝の所見に加えて，Steatohepatitisの特徴的な所見は簾状エコーとbright pancreaseが重要と思われた．